3人のDNAを引き継ぐ赤ちゃん

話は変わるが、技術的にはすでに、遺伝子的に3人の親を持つ子供の誕生が可能な時代である。可能というかイギリスですでに、致命的な遺伝性疾患を回避するために、3人のDNAを引き継ぐ赤ちゃんが生まれている。

「赤ちゃんは、男性のお父さんと女性のお母さんの2人から生まれるもの」という前提すらなくなった世界が訪れるとしたら、私たちは誰とセックスをして、誰と家族になり、誰を愛し、誰と子供を持つだろうか。

私は自分の遺伝子を継ぐ子供がほしいとはあまり思わないのだけど、次世代に何かを託してみたいという思いはうっすらとあるので、「孤児になってしまった子がいるので、5人で共同親権を持ちませんか?」なんて誘いがあったら乗るかもしれない。そういえば、『献灯使』の世界では”両親”に育てられている子供がほとんどいないらしい。

時代は変わるし、人間も変わる。これは口癖なのだけど、私は、既存のルールのなかで上手くやる方法よりも、既存のルールの外側に出ることを考えたい。
『献灯使』をはじめ、優れた小説はいつだってその可能性を示唆してくれるのだ。

Text/チェコ好き(和田真里奈)

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チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです。