うまくいかないときこそ「価値観の棚卸し」

ずっと同じように生きていても、自分の意思とは裏腹に、止むを得ず何かを手放したり、何かを諦めたりしなきゃいけないときって往々にしてやってくる。

そういうときって、やっぱりちょっと惨めだし、寂しいし、悲しい。だけどそこでちょっとだけ抵抗して、目の前で起きていることを、ただ惨めで、寂しくて、悲しいだけのことにしない方法を探ってみる。すると案外その過程で、それまで自分に不可欠だと固く守り抜いてきたこだわりが、実はとっくに不必要になっていたこと、ただ固執していただけだったことに、気づかされたりするものだ。

だから、何となく色々うまくいかないときって、それまで自分が育て上げた価値観を、一旦棚卸しする貴重なチャンスなのだ。賞味期限の切れたものを廃棄すれば、空いたスペースにはその時本当に必要なものを、新たに陳列することができる。

見慣れた景色も良いけれど、意を決してちょっとだけ遠くに足を伸ばせば、案外、今よりもっと美しい景色が広がっているかもしれない。少なくとも、世界がそんな希望溢れる可能性を有していると気づけたことは、過去の棚卸しによって得られた、大きな収穫の一つなのだ。

Text/紫原明子

初出:2016.01.15