失恋、病気、失業、友人や家族との喧嘩、財布をなくした……などなど、大きなことから小さなことまで、人生のトラブルや災厄は、生きているとある程度は避けようがない。そんな災厄に見舞われたとき、あなたはその時期を、どうやって乗り切っているだろうか。
まずは、「とにかく酒を飲む」という方法があるだろう。しかし私はというと、アルコールをまったく受け付けない体質で、お酒を飲む機会といえばよっぽど体調がいい年1~2回、それもグラスに半分程度だ。そんな体質なので、いわゆる「ヤケ酒」ができない。どんなに嫌なことや悲しいことがあっても、素面でいる以外にないので、できることといえば「フテ寝」くらいである。
しかしごくたまにだけど、こういう体質に生まれて良かったなと思うこともあるのだ。お酒が飲めないので、人生でどんなに辛いことがあってもアルコール依存症にならなくて済む、とか……。
辛いときはどのように過ごすのがベストか
辛いことがあると、自暴自棄になってヤケ酒や暴飲暴食に走るなど、極端な行動に出てしまう人はけっこういる。お酒が飲めない私には想像するしかできないけれど、一晩中アルコールを摂取しながら親しい友人に嘆きを聞いてもらうのも、心を回復させていく中で必要な過程ではあるのだろう。
だけど数回それを繰り返してちょっと気が済んだら、次のステップとして、精神科医・神谷美恵子の著書である『生きがいについて』などを読んでみるといいかもしれない。
神谷美恵子の考えでは、不幸なときはできるだけ何もせず、抑制できるところは抑制し、静かに過ごすのが良いらしい。なぜならその不幸な出来事の中に、善いものと悪いものがどれだけ含まれているか、その時点の私たちには判断がつかないからだ。自暴自棄になったままでいると、余計に事態がこじれていってしまう。
「人間万事塞翁が馬」とはよくいったもので、落馬して大怪我を負っても、そのおかげで兵役をまぬがれ、むしろ命拾いした――なんて事例は、きっと世間にたくさんある。反対に、人から憧れるような幸せが、のちのち災厄を運んでくることだってある。
何がラッキーで何がアンラッキーかは最後まで、そう、私たちが死ぬその瞬間までわからない。だから、自暴自棄になってお酒を飲む期間を経て気が済んだら、あとは1人で静かに本でも読んで、不幸な出来事をとりあえず「寝かせておく」こともまた、人生戦略なのだ。
自暴自棄になる期間を経るまでもなく、酒が飲めず友人たちと大騒ぎできる性格でもない私は、嫌なことや悲しいことがあっても1人で「ぐぬぬ……!」と耐えるばかりで、いつもちょっと悔しい思いをしていた。自分のようなタイプの人間は、不自由でつまらないと思っていた。が、『生きがいについて』を読んで、私の静かなやり過ごし方も別に間違ってはいなかったのだと、少し救われたのであった。
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