純喫茶には細部まで計算された美しい世界がある
以前、あるテレビ番組に出演させて頂いた際、スタジオのセットについてスタッフの方から「いくつかの店が混ざってもいいから、自分の理想の空間を作るとしたら椅子やテーブル、壁紙、床などどこの店のものを選びますか?」という質問を受けて、とても悩んだことがあります。
というのも、好きな店はいくらでも挙げることができるのですが、その空間にあるお気に入りのテーブルや椅子などの家具、コーヒーカップやシュガーポットなどの食器たちを思い浮かべてみると、その店の中で存在するからこそ、絶妙なバランスで輝いているのでした。ですので、数店舗からいくら素晴らしい部分だけを切り取って集めたとしても、他の店に存在していたものたちと調和するとは限らず、それゆえに店主たちが作り上げた理想の世界というのは、細部に至るバランスまで計算しつくされているのだ、と感激したのです。そうして、1軒1軒が作られた過程を思うと、店主たちの溢れ出る愛情や情熱を感じ、ますます愛おしくなるのでした。
【左】隠れ家のような席も(浅草・アンヂェラス) 【右】真紅の椅子(有楽町・ROYAL)
【左】吹き抜けも捨てがたい(なんば・アメリカン) 【右】大きな窓の魅力(高田馬場・ロマン)
【左】中庭と池も欲しい(松本・かめのや茶房) 【右】壁が水族館のよう(岡山・キャッスル)
今日は「喫茶店の日」。帰り道に大好きな純喫茶に寄るのも、いつもと違う駅で下車して知らない純喫茶の扉を開けてみるのも、また、すぐに訪れることができない場合は、頭の中に存在するお気に入りの空想純喫茶を訪問しながら、自分で丁寧に淹れた珈琲を飲むこともおすすめです。
【左】ナポリタンは必須です(神保町・ラドリオ) 【右】メニューは手描きで…(東向島・マリーナ)
【左】看板メニューも(神田・エース) 【右】美しいペアソーダ(藤沢・ジュリアン)
珈琲の香りにほっとするひと時を(苦手な方はお好きな飲み物を)。本日は、一日のどこかに「喫茶店で過ごす時間」を作ってみるのはいかがでしょうか?
オリジナルのコーヒーカップ(なんば・アラビヤ)
Text/難波里奈
難波里奈『純喫茶、あの味』
難波さんの新刊『純喫茶、あの味』に興味がある方はこちらから!
※2018年4月13日に「SOLO」で掲載しました
- 1
- 2