周りの目は気にせず、マイペースに好きでいていい

イベント時に配ったマッチケースの写真 左:著書たち/右:特典のマッチ(淡路島・ユースの看板デザインをお借りして)

たとえば、以前から好きだった珈琲や純喫茶への私の恋心が加速した、2007年頃のこと。なぜあんなに没頭していたのか、そのきっかけは、当時勤めていた会社を辞めたいと思い始めたことでした。
人間関係などに特に不満はなかったものの、業務に慢心してしまったのか、心が活発に動かないような無心な日々を過ごしていました。一方で、それを補うようにと、仕事が終われば日に何軒もの純喫茶を巡り、ある時期はブログへ月に72本も記事を上げるほど純喫茶のことしか頭にないような状態になっていたのです。
そんな時期を経て10数年。今では、純喫茶にまつわる書籍を何冊も出版することができたり、皆さまの前で純喫茶の魅力を思う存分語れる機会を頂けるようになったのですから、あの「暗黒期」には感謝しなくてはいけません。

現在に至った心の動きや純喫茶がもたらした効能などを、精神科医の星野さんに分析してもらったのですが、人には心がふわふわするものが大切で、それが私にとっての純喫茶だったとのこと。
さすがに1時間半のイベント内には分析は収まらず、大急ぎで終了してしまったので、また次の機会にゆっくりと伺いたいと思います。

生まれた名言は数え切れず、中でも印象的だったのは、「麻婆豆腐はカレーですよね?」と尋ねられて戸惑ってしまったという水野さんに、「僕なら『クミンを入れてみてはいかがですか?』と提案しますね」という星野さんからの斬新な回答。
自分と違うものをはなから否定するのではなく、カレーになる何かを提案してみる優しさ。私の拙い文章では分かりにくいかもしれませんが、会場にいた誰もが星野さんの懐の深さにしみじみと感動したのでした。
他には、水野さんによる「透明カレーの開発」や「カレーの玉ねぎは長時間炒めない」、「第6ステージまでいくと写真を見ただけでどんな作り方をされたカレーか細かなところまで分かる」という話など、いつまでも聞いていたい愉快な話がたくさんでした。

さて、このイベントを通じてお伝えしたいことはいくつもあるのですが、「何かに夢中になって周りを忘れてしまうほど没頭して、他の人に笑われてしまう時期があったとしても、ずっと続けていたら必ず何かの記録や形になるので、周りの目はあまり気にせずにマイペースに好きでいて良いのではないか」ということ。

水野さんの好きなカレー、星野さんの好きなお酒(?)、難波の好きな純喫茶…。皆さんが好きでたまらないものはこの中にありますか?
愛情を注げるものが生活の中にあるという幸せをずっと大切にしていきたいですね。

『純喫茶、あの味』の書影 難波里奈『純喫茶、あの味』

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Text/難波里奈

※2018年5月17日に「SOLO」で掲載しました

次回は <「これはまるで恋のようだ」と叫びたくなる、憧れの純喫茶「エトワル」>です。
難波さんが途中下車をしてまで立ち寄りたかった純喫茶「エトワル」。内装の美しさと料理の美味しさに、あなたも思わず恋をしてしまうかも?