リナ・ボ・バルディの魔術的建築
真面目な話をすると、文学や芸術、それから旅行のすごいところは、自分が当たり前の「現実」だと思っているものでも、地球の裏側らへんまでいくと実は全然そんなことなかった、と気付かせてくれるところにあります。世間は狭いですが、地球はやっぱり広いのです。
もう1つ、ワタリウム美術館で3月27日まで開催されている、『リナ・ボ・バルディ展』。リナはブラジルの女性建築家ですが、彼女の設計した「サンパウロ美術館」は、無機質な高層ビルが立ち並ぶなか、突如現れる巨大な赤の建築が目を引きます。こんな夢に出てくるみたいな建物が、本当に存在するんだろうか? 私は、これもやはりラテンアメリカが生んだセンスであり、マジック・リアリズム的だ、と展示を見て思ったのです。
ちなみに、冒頭で紹介したトペス。標識があると思って速度をゆるめたら結局なかったり、標識がないので特にスピードを落とさずに運転していたらドスンと来た、なんていう話も聞いたことがあります。
なんだか傍迷惑な話にも思えますが、トペスのあるべきところにトペスがなかったり、ないはずのところにあったり、シーツに包まれて昇天したり、UFOを目撃したり、夢みたいな現実の建築があったり──たぶん私たちは、もっと自由に、もっと広い世界で思考してもいいのです。
もしあなたが、ストレスで肩がガチガチに凝っちゃったりしたときは、意識をラテンアメリカのあたりまで、ぽーんと飛ばしてみるといいかもしれませんよ。
Text/チェコ好き
※2016年3月18日に「SOLO」で掲載しました
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