『ボーダー 二つの世界』を見て
2週間ほど前に、『ボーダー 二つの世界』という映画を見た。この作品は、一言でいうと「変な映画」だ。予告を見ても、どんな映画なのかよくわからない。話の内容もラブストーリーなのか、ミステリーなのか、それともホラーなのか。前情報をさらってもなんだかはっきりしない(一応、ファンタジーらしい)。しかし、原作・脚本を担当したのが『ぼくのエリ 100歳の少女』の原作者。その情報を知ったからか、作中に漂う雰囲気が2作品とも似ている気がした。うーん、これは見ないわけにはいかない! と思い、公開間もなく劇場に足を運ぶことにしたのだった。
あらすじは、人並み外れた嗅覚を持つ容姿の醜い孤独な主人公・ティーナが、あるひとりの男性との出会いによって人生が徐々に変化していくお話。たしかに、彼女の容姿は醜い。この女優さんには特殊メイクが施されていることを、映画を見終わったあとに知った。ブスとか醜いという言葉を超えて、どこか人間離れしている容貌に納得できる。彼女がスーパーで買い物をしているだけなのに初老の女性から顔を凝視されるシーンから、彼女の孤独がうかがえた。ティーナはどれくらいの年齢なのだろうか。たぶん、40歳くらいか。もっと上かもしれない。それくらいの長い年月を、彼女は容姿で差別され、人と違っている自分に対しての戸惑いと嫌悪感を広げていったのだろう。「北欧らしさ」と言えばそうなんだろうけれど、作品のなかに充満しているどこか寂しく諦めにも似た空気が、彼女のどうすることもできない孤独を表現しているようでもあった。
といいつつ、彼女は男と2人で自分の所有する家に住んでいる。恋人がいるのだ。醜い容姿から人との関わりを避け、孤独に暮らすティーナにも愛してくれる人がいて、ささやかな生活を営んでいる、ように見えていた。正直に言うと、私はこの恋人役が出てきた瞬間に、「なんだよ……!」と思ってしまった。お前の思う孤独や絶望なんて、そんな適当なもんなのかとほんの少しだけ苛立ってしまったのだ。
施設で暮らす年老いた父に、「恋人とはうまくいっているか?」と尋ねられるシーンがある。ふたりのやり取りを聞いていると、父と恋人の仲はあまりいいものではなく、気が合わなさそうではあった。「自分の家なんだから、あんな男追い出して、好きにすればいいのに」という父に対して、「ひとりでいるよりマシよ」と返事をする。何気ないシーンであった。定期的に父との面会を交わす娘。仕事はどうか? 病気はしていないか? 食事はちゃんととれているか? という延長にある、恋人との関係を尋ねる父。どこの家庭でも繰り広げられるような、あまりにも普通の会話ではあった。しかし、この台詞には彼女の重い孤独がすべて詰まっているように私には聞こえる。
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