私は恋愛ができない。でも、この気持ちだけで生きていける

 あとは、どうしようもない寂しさみたいなものがにじみ出ているような人だった。この人の寂しさの穴は、誰が相手だろうが、きっと埋まらない。私にも無理そうだった。自分を常に客観視していて、ずっと孤独でいるように見える。私は一人で行動することが好きで、どんなところに行っても、「寂しい」なんて思わない。けど、この人を見ていると、すごく、「寂しい」と思う。
私もこの人と同じで、ずっと一人でいるように見えるのかもしれない。自分で自分のことを孤独から救ってあげることができない分、私はこの人を孤独から救ってあげるとか、幸せになって欲しいとか、思っているのかもしれなかった。

 何か見返りが欲しいとは思わない。今の関係が続いていればそれでよくて、私に期待し続けてくれるのなら、できる限り応えたい。
私たちはとても近い友達みたいなもので、連絡を取り合うことも会うこともそれほど多くはないけれど、この人の記憶の片隅に残れているだけでよかった。それだけじゃ、ダメなんだろうか。何も求めないし、嫉妬もしない。だから、私は恋愛ができないのかもしれない。

 たぶん、世間一般でいう恋とか恋愛の形じゃない。それでも私は、この人がくれた言葉や記憶、それから思い出を頭のなかから取り出して、もう少しだけ頑張ってみようという気持ちになる。触れなくてもいいし、会えなくてもいい。忘れられても、別に困らない気がする。
これから、別々の人を好きになったり結婚したりして、私自身だってこんな風に考えていたことをゆっくりと忘れていく。お互いの無関係なところで、知らないうちに勝手に幸せになっていくんだろう。
でも今は、この人のことをただ純粋に好きだという気持ちだけで生きていける。私には、それだけで十分だった。この気持ちを、一体なんと呼べばいいのだろう。私には、恋以外にぴたりと当てはまる言葉が思いつかない。

 私には、ずっと好きな人がいる。きっと、この思いが何かの形になることは、この先もずっとない。でも、これでいい。私が自分の中身を燃やし続けている限り、好きでい続けることができるはずだ。

Text/あたそ

次回は<「ずっとひとりだった」私が本を出版するに至るまで>です。
あたそさんが初の書籍『女を忘れるといいぞ』(KADOKAWA)をオール書き下ろしで7月7日に発売!出版に至るまでになった要因は、友人の支え……というよりも、「ずっとひとりだったから」かもしれないと語ります。