「女の性」について書こうと決めたきっかけは作家の斎藤綾子さんだった

いくつかある行きつけのお店のひとつが、新宿二丁目にある『A Day In The Life』、通称アディです。作家の伏見憲明さんのお店で「ひとりで飲みに出るけど、誰かとしゃべりたい。できれば男性がいいけれど、口説かれるのは面倒」という時に顔を出す。そのアディの店長のこうきくんが、ポット出版から自らのゲイライフを描いたコミックエッセイ『ビリガマ』を出版することになり、9月16日に開かれるその発売記念トークイベントにゲストコメンテーターとして参加することになりました。

メインゲストはゴールデン街のバー『Sea&Sun』で「キャプテン」として切り盛りしている漫画家のドルショック竹下さんで、こうきくんとドルショックさんが二丁目vsゴールデン街をテーマに対談し、それに対してわたしと、もうひとりのゲストである作家の斎藤綾子さんがチャチャを入れるという……って斎藤綾子さんだと! 実はわたしが、自身の執筆のテーマを女の性について定めたのは、斎藤綾子さんの『ルビーフルーツ』という作品を読んだのがキッカケなのです。

「世の中にはこんな本があるんだ」

あれは高校生の頃でした。当時のわたしは女子高生デートクラブという、お金を払えば誰でも女子高生とデートができるというめちゃくちゃな店に、放課後、ほぼ毎日のように入り浸っていたのですが、ある時、客待ち中に居合わせた女の子が本を読んでいた。待機中の女の子たちの中で、本を読んでいる子は非常に珍しかったのと、当時から将来はモノカキになりたいとぼんやりと思っていたわたしは俄然に興味を惹かれて「なんて本読んでるの?」と尋ねたところ「斎藤綾子の『ルビーフルーツ』っていう本。わたしたちみたいな女の子の話だよ」と返ってきたのです。

興味を持ったわたしは、さっそく図書館で借りて読み、「世の中にはこんな本があるんだ」と衝撃を受けた。女性の書き手による女の性の欲望を赤裸々に書いた本。そして思いついたのです。「もしかして高校生のうちに、デートクラブだとか援助交際だとかの自分の日常を小説にしたら、世間の注目を集めて作家としてデビューできるんじゃないか」と。まぁ、結局は遊びにかまけて一行すら書くことなく高校三年間を終えたわけですが、『愛より速く』だとか『フォーチュンクッキー』だとか斎藤綾子さんの著作を読み漁っては毎度、衝撃を受けていた。そんなわたしのオリジンの一つである斎藤綾子さんに実は20年以上前に、一度だけ会ったことがある。