夢は炭鉱のカナリア

トピックはいろいろあるけれど、最後まで読むと、本書は決して巷で言われているような「フラフラしていると中年で詰むので、若者は結婚して子供を持って定職に就きなさい」という内容ではないんじゃないかという印象を受ける。それよりは、中年になると誰しもが何かを失うが、代わりに中年になったからこそ得るものもあるので、失ったものを嘆きすぎずに得たものを大切にしてなんとかやっていこう、という普遍的な内容のように私には思えた。若い頃は考えられなかったと言うけれど、今は本屋でも働いているらしいphaさんはなんだか楽しそうだ。

また、冒頭で「体力と元気がない系独身女性のサンプルがない」と嘆いていた私だが、最近は、それなら自分がサンプルになればいいのでは、と思って生きている。いわば炭鉱のカナリアである。

子供がいないので若い世代に直接何かしてやることはできないが、「こうやって生きててもなんとかなるよ」と示すことで、10歳か20歳下の女性が過剰な不安に駆られることなく、自分なりの選択ができるようになればいい。もしダメだった場合は「ダメでした」と正直に報告するので、それはそれで参考にしてほしい。炭鉱のカナリアなので、私自身は幸せになっても不幸になっても役目を果たせる。そう考えると気が楽だ。

実際にその年齢になったら「30代がナメやがって!」と言うかもしれないけれど、 40代や50代って、やっぱりけっこう楽しそうだなと本書を読むと思う。

Text/チェコ好き(和田真里奈)