40代は決して強くない

昔と変わって目が行くようになったのは、父の婚約者となったアンヌである。17歳からすれば自立していて岩のように動じないように見える40代女性だけど、自分が実際にその年齢に近づいてみると、そんなことはまったくないとわかる。私は今でもいろんなことにびびっているし、慌てるし、動じまくる！　セシルは実行してしまった悪事によって、大人が決して強くなどなく、案外あっさり崩れ落ちる存在であることを知ったのだろう。

しかしそれよりも「悲しい」のは、決定的な出来事（ネタバレかもしれないので一応書かないでおく）が起きたにも関わらず、変わらずに続いていく日常である。あんなに執着していたのに、あんなに楽しかったのに、あんなに憎んだのに、過ぎ去れば何事もなかったかのように元に戻る。これを「悲しい」と思う感性は、この小説を初めて読んだ20代前半の私にはなかったものだ。

年を取ることってやっぱりわくわくする。昔は謎だったいろんなことが「そうだったのか〜！」とわかるようになるし、私の場合、それは若いときに読んだ小説を読み直して気づくことが多い。今はまだまだ新しい（読んだことのない）小説のほうをたくさん読んでいたいフェーズだけど、これから40代、50代にかけて徐々に再読本が増えていくことを、楽しみにしている私である。

Text／チェコ好き（和田真里奈）