30歳になると男性から声をかけられなくなる?「馬鹿ブス貧乏」が生きる道

30歳になると、潮が引いたように男性たちから声をかけられなくなり、女としての需要がなくなる──こんな怖い話を若い頃に聞かされ、上の世代から脅されてきた女性は少なくないと思う。私も20代のとき、この話を先輩たちから聞かされ「そうなんだ」と素直に思っていた。

しかし実際に30歳になってみたとき、自分の身に、先輩たちが言っていたようなことは特に起こらなかった。33歳になっても、そして現在36歳になっても、正直20代の頃とあまり違いを感じない。

なんだなんだ、モテ自慢か!? と思うかもしれない。逆である。私は20代前半のとき、映画学専攻の大学院生だったので、ひたすら学校の地下室にこもって1人で映画のDVDを観ていた。1日3本くらい学校から借りて観ていた。誰もいない地下室でひたすら映画を観ている生活だったので、男性からはまったく声をかけられなかったが、今でもまったく後悔していない。映画が大好きな私にとって、この生活はとてもハッピーなものだったのだ。

そう、「声をかけられなくなった」と思うのは、それまで声をかけられていたからこそ感じる変化。もとから声をかけられていない女性は、30歳になろうと40歳になろうとそこまで違いを感じないのである。これは自虐ではない。おかげで私は、30代後半になっても20代のときと同じように「毎日楽しいな」と思いながら生きている。

今回紹介したい本は、藤森かよこさんの『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。』。すごいタイトルだけど、心を強く持って、できるだけ多くの女性に読んでもらいたい本だ。もちろん男性にも!

シビアに考えてもこの程度なら、未来は明るい

実を言うと、私はこの本の存在をかなり前から知っていたのだが、なかなか手が伸びなかった。だってタイトルが「馬鹿ブス貧乏」である。いや、私だってさすがに、自分の頭がそれほど良くないことも、何千万かけて整形しても石原さとみにはなれないことも、逆立ちしたって年収2000万円は稼げないことも、いい歳なのでわかっている。でも「馬鹿ブス貧乏」とはあんまりではないか。同じことを言うにしても、もう少しオブラートに包んでほしい。

改めて、本書のターゲットである「馬鹿ブス貧乏」とはどのような女性かであるかを確認してみよう。著者の藤森さんいわく、「馬鹿」とは、「一を聞いて一を知るのが精一杯の人」のこと。そして「ブス」とは、モデルやアイドルとして生計を立てることはできなかった人のこと。そして「貧乏」とは、働かなくても暮らせるような資産はなく、基本的に65歳くらいまで賃金労働に従事する必要がある人、またはそういう人を配偶者に持つ人のことである。つまり私を含め、残念ながら今これを読んでいるほとんどの人が、本書の定義では「馬鹿ブス貧乏」だ。何より、英米文学者である藤森さん自身が自分のことを「馬鹿ブス貧乏」だとしている。

本書はそんな馬鹿ブス貧乏……いや、ごく平凡な女性たちが、37歳までの青春期、65歳までの中年期、死ぬまでの老年期をどのように生きたらいいかという自己啓発書だ。自己啓発と言うが、書いてあることにはキラキラ要素がまったくなく、容姿のことも、お金のことも、セックスのことも、健康のことも、どれもかなりシビアである。ただ、読んでいて暗い気持ちにはならない。逆に「シビアに考えてもこの程度か。未来は明るいな」と私は思った。もちろん厳密に何が起きるかはわからないけど、この先の人生でどんな変調が心身を襲うのか、少しだけ先に知ることができる。更年期ってどんな感じなのか、予め知っておいて損はない。