「何もダメじゃないけど上手くいかない」ってある
つまり今回は、何が言いたいかというと……統合失調症を引き起こす要因が1つではないように、人間がその状況に置かれる変数も、無限にあるということである。私たちは上手くいかないとき「何がダメなんだろう」と悩むけれど、「何もダメではないんだけど上手くいかない」ってこともけっこうあると私は思っている。反対に、「本当はここがダメなままなんだけどなんか上手くいっちゃった」ってこともよくある。上手くいっちゃっただけに、本人は自分のダメな部分が改善したのだと思い込むが、実際はそのままだったりして。
変数は1つや2つではない。統合失調症の要因も、人生も、きっとすごくすご〜く複雑なのだ。単純に、これとこれをクリアするとこう! とはならない。状況としては「何もダメではないんだけど上手くいかない」ってすごくキツイけど、原因探しをやめて、「そういうこともある」と考えて気長に待っていると、運が巡ってきてひょっこり夢が叶っちゃうこともある。
本書は最終的に、12人兄弟の末娘だったリンジーの娘が、統合失調症の研究者になるところで幕を閉じる。なんだかできすぎた映画みたいな結末だけど、これはノンフィクション。過酷な先にも希望を見出せる本なので、時間があるときに、ぜひゆっくり読んでみてほしい。
Text/チェコ好き(和田真里奈)
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