あるとき、同業種の年上男性・ナカタ(仮名)と茶をしばいていたところ、ずいぶんと意気消沈した様子でこう言ったのです。「いつの間にか、若い女性に利用されるような立場になってしまっていた……」と。よくよく聞いてみたところ、サブカル界隈で名前をあげたいというような欲を持った女・アケミ(仮名)にターゲットにされ、酷な目にあわされたという。
あらましとしては、まずアケミはナカタに気のあるそぶりを持たせ、その気になったナカタは、自らが主催するイベントなどにアケミを起用。20代の頃からそうやってちょっとした界隈の権力者に取り入ってのし上がっていく女性はよく見かけていたし、わたし自身もそう取られても仕方のない行動をしていたという心当たりもあるので、「アケミ、がんばって出世しーやー」くらいに思っていた。ところが想像以上にアケミはビッチであった。
アケミは他の男性に近づいて
あるとき、アケミはまた別の、一部では名の知れた男性・カワイ(仮名)に近づくために、「ナカタにストーカーされている」と相談。疑うことなく大真面目に受け取ったカワイは怒り心頭。わたしとナカタがそこそこに親しいことを知っていたカワイは、わたしに「ナカタにストーキングされてるって、アケミちゃんが困ってるらしいよ」と訴えてきた。
しかし、アケミがナカタに近づくところにたまたま居合わせていたわたしからすると、明らかにアケミから仕掛けていったことを知っていたし、そもそもナカタがストーカー化なんてする? きな臭せーなと思いながらも、ナカタに探りを入れたところ、「アケミちゃん? 会ってるよ! こないだもバレンタイン当日、わざわざ家にチョコレートを届けに来てくれたんだよ~!」と鼻の下を伸ばして惚気ている。
その結果を持って、カワイに「先日もナカタの家にまでわざわざバレンタインのチョコレートを届けに行ったらしいし、デートにだっていまだ応じてる。それなのにナカタをストーカー扱いは、ちょっと違うのでは」と苦言を呈したところ、「アケミちゃんが嘘を言ってるっていうのか! 嫉妬するのはみっともないぞ!」とこちらもこちらで盲目状態であるようなので、もうみんな勝手にしてくれ! と撤退を決意。
月日が経ってから…
それからひと月かふた月か経った頃、ナカタから「いつの間にか、若い女性に利用されるような立場になってしまっていた。いろんなことをやりたいっていうからバックアップしてあげたんだけど、陰でウザいとかストーカーとか言われていたらしい……」という発言を聞いたわたしは、そのピュアさに衝撃を受けた。まぁ、ちょっと知名度のあるオジサンも、それはそれで大変ですね。
Text/大泉りか