これまでのやり方が通用しなくなる、30代後半

角田さんも書いているが、これは何も旅行に限った話ではない。「これまでのやり方が通用しなくなる」というのは、ある程度の年齢に差しかかると仕事でも恋愛でも友人関係でもどこでも誰にでも起こりうることで、実際に身に覚えのある人も少なくないはずだ。私自身も、33歳くらいだとまだよくわからなかったけど、36歳になった今は「なるほど〜、先人が言ってたアレはコレかぁ」と実感するに至っている。

でも、さきほどの「なんかつまんない」と矛盾してるじゃんという話ではあるのだけど、今回、私は旅行をやっぱり楽しんだのだと思う。瞬間瞬間の、脳みそがスパークするような強烈な刺激は確かにもうない。だけど、旅を終えて一週間も二週間も経った今になって、「あ、私あのとき楽しかったんだなあ」とふと思うことがある。慣れない発音で「アーチュー(リトアニア語で“ありがとう”)」って言ってみたらちゃんと通じて嬉しかったとか、食堂で相席になった人たちが何食べてるのか観察してたら面白かったとか、エッセイとしてはまったく新鮮味がなくつまらないことばかりだ。だけど楽しかったし、「なんかつまんない」と思ったこと自体も、自分の中の変化として面白かったというか……

今後の旅をどう変えたら面白くなるのか、私の今の年齢にふさわしい旅ってなんなのか。旅行をやめて地に足をつけるのではなく、そんなことを考えつつ、私は懲りずに次の旅先を手帳にリストアップしている。

Text/チェコ好き(和田真里奈)