先日、5歳の息子を寝かしつけている最中のことです。突如息子がこう言ったのです。
「俺ってぇ、サバサバしてるから」
例えばスーパーでお菓子を買ってくれとねだってきて、無碍に却下したときにおとなしく納得したのを「偉いね」と褒めた返しだったり、ヨーグルトを買っておいてほしいと頼まれていたのに、すっかり買い忘れて朝ごはんに出せないことを謝ったときに、「俺ってぇ、サバサバしてるから」と返されるならまだわかるけど……いや、わからない。いったいどこで覚えたそんな気色悪い言葉。うっすらと背筋を怖気させているわたしに向かい、さらに息子が追撃を放った。
「ねぇ、ママってサバサバしてるひと?」
さて、ここでなんと返すのが正解でしょうか。サバサバしているように見えなくもないタイプだとは思うのですが、それでも本当にサバサバしている女はきっと、恋愛についてなんて語らないし、性欲をテーマにした小説を書こうという発想は沸きすらしないに違いない。
10代のとき、彼氏を寝取った幼馴染には、いまだモヤモヤを抱えているし、幼稚園の頃、近くにいる女児たちのスカートめくりをしながら男児が近寄ってきたのでめくられないように裾を押さえたところ「お前のスカートなんかめくらねーよ、ブス!」と言われたことにも、いまだ腹を立てている。もちろん嫌な人や憎んでいる人のSNSも、定期的にチェックしています。そういう、しつこいしねちっこい部分を抱えていることを自覚しているので「サバサバしてるよ」なんて口が裂けてもいえない。
だからといって「ママは、あんまりサバサバしてないかな」という告白は、5歳児にするには重すぎるし、そう答えたら答えたで「なんで? どうして?」攻撃が始まることは間違いない。「なんで? どうして?」に正直に答えるわけにはいかないし、適当に嘘をついてはぐらかすことがマーベラスなオトナのエレガンスだとわかってはいるけれど、そこには抵抗があって、それこそがわたしのウエットでモタモタしている部分でもある。
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