「そういう服装って…」
「そういう服装って男ウケ悪いよ?」と言う男はみっつの罪を犯している。
まず「自分の好みではない」というのを主語をデカくして「男ウケ悪い」と言ってしまっていること。
それから、相手の外見に対して面と向かってケチをつけること。
さらに、自分は相手の外見に対してケチをつけてもいい立場だと思ってること。なんなら「え〜! そうなんですか! 知らなかった〜☆」などという接待を期待していること。
こういう罪人が世の中にはうじゃうじゃいる。
そこで
「そういう服装って男ウケ悪いよ?」
に対して
「男のためじゃなくて自分のために着てるだけだから」
とズバッと返す。
マックにいた女子高生たちがその場で立ち上がって拍手喝采、スカッと感動物語だ。
でも「男のためじゃなくて自分のために着てるだけだから」と言う女はひとつの罪を背負っている。ちょっとだけ嘘をついていることだ。
だって自分のためだけに服を選ぶことなんてそうそうなくないか?
私はオシャな友達と会うときはそのシーズンの新作を着て行くし、逆に休日でもオフィスカジュアルみたいな服を着てる子たちの女子会に混ぜてもらうときは悪目立ちしない無難な服装をしていくし、テレビ出演時は谷間丸出しボディコンワンピ、お母さんの前ではちゃんとした大人ですアピールのためにコンサバ服、今は亡きおばあちゃんに会いに行くときは喜ばれるので和装だったし、初デートにはもちろん体のラインが出るニットワンピを着ていく。
これが合コンにいきなり着物姿の私がバーンと登場したりしたら「どうした!?!?!?」となることは目に見えているし、おばあちゃんのお見舞いに谷間丸出しボディコンワンピは来ていけない。
性加害と服装の関係
そもそも女はずっと影に日向に外見を規制されてきた。
学生時代はメイクするな眉毛剃るなと言われ、プールの授業では脇の下の毛の処理が甘い女子、背中の産毛が濃い女子がバカにされ、社会人になったら電車広告で「そんなんじゃ男から嫌われるよ?」というテンションで急に首から下の全身の毛を失くすよう脅迫される。
「そんな短いスカートなんて履いていたら痴漢にも遭うよ」「勘違いされるような服装してたんじゃない?」「うなじが見えると男子生徒が授業に集中できないからポニーテール禁止」とかいう男発信の聞くに耐えないアホな意見もある。
でも実際は男の推奨するおとなしそうな服装でいる方が加害される確率が高まることは最近徐々に認知されつつある。
ナンパひとつとったって、膝丈プリーツスカートに黒髪ストレートとかでいると「ね〜ね〜今から一緒に飲もうよ〜」とタメ口でいきなり肩を抱かれたりするし、駅から家まで跡をつけられたり、変態からの加害の枚挙にいとまがなくなる。
これがボディコンワンピに巻き髪でいると「もしよかったら一杯ご一緒していただけませんか?」に変わる。
なので最近は女側から「おとなしそうな服装してるとナメられるから派手な服装しなきゃ!!」と言う声もある。でも痴漢避けとして派手な服を着てる女がたまたま性被害に遭ったら「そんな服装をしていたからだ!」というセカンドレイプの嵐に遭うことが目に見えるようだし、それに小花柄とかぺたんこ靴とかいったいわゆるナメられやすい系の服装が好みという女子がわざわざ痴漢のためにギラギラした服装をしなくてはいけないと言うのも変な話だし。
もう結局どんな外見なら加害されないんだよ!? と女たちが右往左往している横で「そういう服装って/メイクって/ネイルって男ウケ悪いよ?」が男から繰り出される世界に私たちは生きている。
私がずっと黒髪だった髪の毛をいきなりド金髪にしたのは、なんか黒髪そろそろ飽きたなって気持ちと、あとは通りすがりにケツをスッと撫でていくタイプの痴漢に久しぶりに遭遇していい加減キレたからだ。
ド金髪にしたらナンパもスカウトも変質者からの絡みもガクッと減って狙い通りなのだけれど、そのためだけに私は毎月のダブルカラーで月に2万円と半日という時間と頭皮の健康を消費している。
これで「金髪なんて男ウケ悪いよ?」とか言われたら私はその場で暴れ回るだろうし、「黒髪ストレートなんかでいるから痴漢から狙われたんじゃない?」とか言われても暴れ回る。
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