自傷するくらいなら、心を前向きにさせてくれるタトゥーのほうがいい

温泉に入れなくなるだとか、結婚が難しくなるだとか、タトゥーをいれることのデメリットを挙げるのはナンセンスなので今回はあえて語らない。
けれどももし、今自分の腕や脚に自傷跡があってタトゥーを視野にいれている人がいるならば、ここはそっと背中を押してみたい。今はまだ傷跡はないけど、腕でも切らないとやってられないかも……という方にもだ。

私自身、左腕にファンデで隠すこともできないような傷跡がある。だからわかるんだけれど、タトゥーなんかよりもはるかに自傷跡に対する世間の目は厳しく冷たい。同じ人間として見てもらえないのは実感として、かなりある。

もちろんタトゥーに対して激しい嫌悪感を示す人もいるだろう。けれどそれは頭のかたい中高年にほとんど限られる。私は昔、自傷のことで友達にあっけなくブロックされてしまったことがあるけれど、タトゥーをいれたことで縁を切ってきた人は今の所いない。むしろ良いねと言ってくれたり、実は自分もいれたいんだと話してくれる人のほうが多い。
温泉や銭湯だって場所を選べばOKなところは結構いくらでもある。そういうところでは隠さず堂々と裸になれる。逆に傷跡のほうが私は人に見られるのが怖くて、いまだに隠しながら湯に浸かっている。夏場でも必ず長袖だし、友人の前ですら私は腕を晒せない。傷跡を見て親に泣かれたことのある私からしたら、タトゥーのほうがよほどマシだ。

それから、タトゥーを彫られているときの痛さは自分の腕を切るときよりも数万倍痛い。私は4回彫りに行ったけど、回数重ねても慣れることはなかった。普通に痛い。めちゃくちゃ痛い。
そんな痛みに耐えて自分が選んだデザインを肉体に刻んでもらったときの達成感は、純粋に心を前向きにしてくれる。
傷跡は人生における後悔・絶望を象徴するネガティブなものだけれど、タトゥーは「いれてしまったんだから後悔しないように生きるしかない」という覚悟を象徴すると思っている。ものすごくポジティブなものだ。
自分の腕を切るくらいならタトゥーをいれたほうがいいと思うが、くれぐれも誤解しないでほしい。「自傷感覚」でタトゥーをいれるというのは絶対にしてほしくない。それじゃ自分の腕を切ってるのと変わらないし、彫り師さんにも失礼だ。なるべく、自分の人生を前向きにするものとしていれてほしい。

彫ってもらったタトゥーが似合う人間になろう

こんなこと言っておいて、冒頭では「いれなくてもよかったかも」なんて語ってしまった私だけれども、こんな風にクヨクヨしているときにこそタトゥーは力を発揮する。
「何言ってるんだ、覚悟を決めていれたんだろ! 責任もって後悔しないように生きろよ!」
25歳の自分がこんな風にふと語りかけてくる。
ああそうだった、1年間あんなに悩んで、こいつら(花とツバメ)を彫ってもらったんだった……今諦めて仕事を辞めたりなんかしたら無駄になってしまう。そしたら本当に「いれなきゃよかった」となってしまう。それだけは絶対にイヤだ。

ある意味ではこんな風にダメな自分のケツをパンと叩いてくれる
ちゃんとしなくては。ちゃんと生きなくては。
タトゥーには、そんな役割もあるのです。という話でした。

Text/oyumi