これから先は、何に悩む?
さて、そんな 『ホテル・ニューハンプシャー』 の中で、ひとつわからなかったのがこの文章である。「わからなかった」というのは小説への批判ではなく、何年かあとにもう1回読んでみようという気にさせるので、むしろ肯定的な意味で言うのだけど……。
「一生の半分はずっと十五歳さ。そしてある日二十代が始まったと思うと、次の日にはもう終わってる。そして三十代は、楽しい仲間と過ごす週末みたいに、あっというまに吹き抜ける。そしていつのまにか、また十五歳になることを考えてる」(『ホテル・ニューハンプシャー』(下)新潮文庫、p69)
一生の半分は十五歳で、二十代は始まったかと思うとあっというまに終わり、三十代もあっというまに吹き抜ける。それはなんとなくわかる。しかし、私自身がまだ34歳なので、「いつのまにか、また十五歳になることを考えてる」の部分が、ちょっとピンとこない。40代半ばあたりになると、また自分自身の性格やコンプレックス、恋愛や結婚に、もう一度悩む時期が来るのだろうか?
だとするとちょっと怖いけど、「嘘でもいいから、明るく生きよう」というメッセージが込められた『ホテル・ニューハンプシャー』を、そのときはもう一度読み直そうと思う。若い人が読んでももちろん面白いと思うけど、個人的にはこの小説を、いろいろなことを乗り越えてしまった大人の女性に、ぜひおすすめしたい。
Text/チェコ好き(和田真里奈)
初出:2021.07.31
初の書籍化!
チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです。
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