女の嫉妬は飯のタネ
フランス人女性は嫉妬深い。よく言われます。
フランス人男性は日本人女性が大好き。 理由を知りたくて尋ねるとこんな答えが返ってきて、驚いた覚えが。
「嫉妬しないから」。 思わずそのとき、「本気でそんな風に思ってるの!?」と噴出してしまったのですが、本当に能天気だなあとため息をついた覚えがあります。
そんなわけありません。嫉妬は同じようにするでしょう。むしろある意味日本人女性ほど嫉妬に駆り立てられる環境にいる人たちもいないと思います。横並びが大好きで、人気のモテ服はみんなで着て、モテヘアは一斉に真似をして、“みんなが好きな男性”が好き。 “皆に羨ましがられる男性”に価値があると平気で言う。
だからこそ平気で恋人や夫の浮気相手の女性を「人のものを盗る」と表現します。 別に盗んだわけでもないし、モノでもないし、そんな簡単に“奪われる”ような男捨ててしまえばいいのに何故か、相手の女性を恨む(矛先が女性になるのは本当に違和感)。その上、嫉妬を直球で表現せず、しっとりじっとりと表現して、あわよくば堪えてくれる。それは男性にとって「都合がいい存在」でしょう。人気なわけです。
フランス女は嫉妬深い?
でも、そのあたりはフランス人であっても大して変わりがありません。 では、なぜそんなにフランス人女性は「嫉妬深い」イメージになるのか。それは、「嫉妬」の表現の仕方が直球だからです。 日本人はどちらかと言えば嫉妬を表現するのは「みっともない」としますが、そもそも感情表現を言葉で表現することに障害が少ないフランス文化では、嫉妬ゆえの行動や感情表現が目に見えてわかりやすい。
それに加えて、なんやかんや言ってラテンの文化をひきずるマッチョな国フランスメディアは、「女の嫉妬」をやり玉に挙げて女性を貶めることが大好き。「女の嫉妬」は絶好の「飯のタネ」であると同時に、女性を貶める格好のネタになります。
先の総選挙で、ファーストレディが大統領の元妻(実際には結婚はしていない)の対立候補を応援したことで、メディアは一斉に「女の嫉妬だ! わーいわーい」と飛びつきました。
「これだから女は」
「女は政治には不向き」
こんなイメージを持たせるようなメディアが跋扈する国だからこそ、余計にフランス人男性は「嫉妬する女性」を忌避するのです。いや、「嫉妬する女性」ではなく「嫉妬をあからさまに表現する女性」が嫌い。その分、嫉妬を比較的あからさまに表現しない日本人女性が人気になるのでしょう。
が、それはあくまでイメージで、ファーストレディー、ヴァレリー・トリユルヴァイユールは元妻ロワイヤル候補に対抗したというよりも、昔からの友人であるファルロニとの関係を重視したと言った方が正しいです。そして、彼女も元妻も政治的姿勢のはっきりしている人間。よって、主張をぶつけ合うのは記者と政治家として自然なことですし、仕事をする人間として当然。それがまんまと「嫉妬」と名付けるのにちょうどいい構図だったというだけ。
でもちょっと考えると、日本でも同じことが言えます。 ちょっと前に、2人の女性が1人の男性俳優に振り回された事件がワイドショーを騒がせましたが、ひと段落したら2人の女性のやり取りに話題の矛先が移りました。男の浮気に黙って耐える妻の方が、「正しい」とされたりします。逆に「男の浮気に目くじら立てる妻はみっともない」とされたり。
「嫉妬」を女性と結びつけるとき、そこには女性を貶めずにはいられない、弱い男性たちの姑息な根性が見え隠れします。 女は嫉妬深い?さてさて、そんなことを言っている男性のほうの嫉妬深さはいかがなものでしょうか? 男性から言わせていただくと、男の嫉妬の方が断然怖いです。何せ「嫉妬は女のもの」とされているので、自分が嫉妬していることにすら気づかず、実力行使をしてきますから……。
Text/Keiichi Koyama