セックスをやり尽くした果てにあったもの
――では逆に、支配されることで失ったものはありましたか?
神田:浅い意味では職場の信頼を失いました。ものすごく嫉妬深いDV男と付き合っていたとき、職場に私とセクシーな関係の相手がいるのを知って「仕事に行くな」と言われて。私は彼のそういう要求をSMのプレイだと思っていて、言われることを忠実に守っていたんです。それで、うっかりその話を職場でしたり、仕事の現場に行かなかったりして、かなり信用を失いましたね。
そのときは家族の信頼も失いかけていました。その男と同棲していた部屋に次女が乗り込んできたからよかったんですけど、もし来てくれなかったら家族バラバラになっていたかもしれません。
――日常生活にまで支障を来していたのですね。
神田:もっと深い意味で失ったものというと、実はわたし、今はもう何もセックスで感じないんです。
先ほど話した私をいたぶった後に泣いてくれた男性ですが、彼とのセックスで性を極めたせいで、セックスの幻想がなくなっちゃって。
電マを当てれば身体はイキますよ。けれど、オナニーするときに妄想するものが何もない。妄想よりも、自分が現実でやってきたことの方が大きすぎて何も頭に浮かばないんです。行き着くところまでいって、全部やり尽くして満足するとこうなっちゃうんだなぁって、ガッカリです。
ただ、彼が泣いてくれたおかげで、男性は自分を支配してくれるロボットではなく人間なんだって、やっとわかったんですよ。
SMなのかDVなのか見極めなければいけない
――性の極北までいったつばきさんから見て、「支配されたい」という欲望はコントロールすべきものだと思いますか?
神田:私はコントロールすべきだと思います。性的なものと暴力ってすごく近いところで混ざり合っているんですけど、されている側が「暴力」と感じたらそれは暴力なんです。限りなくDVに近いSMは危ないとは思いませんが、その逆は危険です。だから、自分の欲望をきちんとコントロールした上で、相手のしていることがDVなのか性的な意味合いを持った支配なのかを見極めないといけない。
――「支配されたい」という気持ちは、どうすればコントロールできるようになるのでしょうか?
神田:性とはまったく関係ないんですけど、経済力をつけて自立することがすごく大事。社会的な意味で対等じゃないと、本当の意味で性奴隷になってしまうんです。男性と対等に愛し合うためにも、自分の仕事は手放してはいけないと思います。