「男性に支配されたい、いたぶられたい」という欲望をストイックに突き詰めてきた神田つばきさん。今年9月には自伝的小説『ゲスママ』を出版し、自身の被支配欲に生きた半生を振り返っています。インタビュー前編では、女性が胸に抱く「支配されたい」という欲求の正体について語っていただきました。後編では、つばきさんの実体験をもとに「男性に支配されることで手に入れたモノ、失ったモノ」についてお話を伺いました。
☆前編はこちらからご覧ください
支配されることで手に入れたもの
――実際に、男性にいたぶられたり、支配されたりしたことで手に入れたものはありましたか?
神田つばきさん(以下、神田):いちばん大きかったのは、セックスでイケるようになったことですね。それまでのセックスでも、感じてはいたけれどイケなかったんです。でも、会った瞬間にひっぱたかれて床の上に崩れたところで顔を踏まれると、うわ~ってドーパミンが出て、そのあとのセックスでイキまくれるんですよ。
――イキまくれるなんて、なんだか羨ましい話ですね…。でもなぜ、いたぶられることでイケるようになったのでしょう?
神田:踏まれている自分も何かを捨てているけれど、私を踏みつけている相手はもっといろんなものを捨てている、と思うと興奮するんですよね。例えば私が美人局で、男性が陥れられる恐れだってあるわけです。そういうリスクを背負ったハラハラした状態で、男性はひどいことをしてくれているんだ、と思うと、こちらのエクスタシーも大きくなるみたいです。
――「支配されたい」という思いは、セックス中だけ発揮されていましたか?
神田:いえいえ、私の場合は常に支配されたいと思っていたので、恋人とのパートナー関係にも「被支配」を持ち込もうとしてました。でも、なかなかそれは難しかったですね。愛情がある程度育ってしまうと平和な時間が多くなって相手にハラハラできなくなります。かといって、緊張感だけが漂う愛のない関係だと、だんだんといたぶる行為に心がこもらなくなってきて「こうやればいいんでしょ?」みたいな感じになるので、それはそれでうまくいかない。
――支配関係を常に維持することって難しいんですね。
男の涙が女王蜂のような全能感を与えてくれた
神田:でもね、あるとき、お付き合いしていた男性で、暴力的な行為の最中に泣き出した人がいたんです。泣きながら私のことを殴って「俺を止めて」って言うんですよ。そのとき、「この人の欲望をコントロールできるのは私しかいないんだ」って思えた。あの瞬間のエクスタシーはすごかったです。ほかのことでは得られない感覚でした。
――支配されたかったはずなのに、いつの間にか相手を支配する喜びを知ってしまったと。
神田:そう。まるで悪い女王蜂にでもなった気分で、相手を支配する全能感がありました。ふたりで同時に理性を手放す瞬間の恐怖の中で、「堕ちていく!」って思いながらお互い相手だけ掴めるような感覚。もちろんそれは錯覚なんですけど、ふたりで泣きながら震えるっていうのは、ほかのことでは得られない快感でしたね。