黒歴史その1:殺しにくるメンヘラ
ある年の12月中旬。
当時、ネットで出逢った自傷癖のある女の子と付き合ってた僕は、毎晩のように送られてくるリストカット画像と鬼電に耐えきれなくなり、ついに別れを切り出しました。
「クリスマスプレゼント買ってあるのに……」
「別れたら死ぬ……」
なんて執拗に言われましたが、そもそも彼女は死ぬつもりはなく、ただ感情のはけ口として手首を切っていることを知っていたので、
「ごめん! 無理!」
で押し通して、サヨナラしたんです。
当時は、ここで情に負けてはいけない、悪者になるんだ、それが“本当の優しさ”だから、みたいなことを思ってた気がしますが、そもそも付き合ったきっかけが“巨乳でエロそうだったから”なので、まあ何とも言えないですね。
それでまあ、彼女と別れて、クリスマスの予定は暇になったので、別のネットの友達グループと飲むことにしたんです。
午後11時過ぎまで酒をあおり、「まだ遊び足りねえからうちに来いよ!」という流れで、オールをするため当時住んでいたアパートまでみんなを連れて行きました。
そしたら、玄関の前で別れたばかりの元カノが手首を切って倒れてたんです。
家のドアを何度も開けようと思ったらしく、ドアノブは血でべっとり。傍らに落ちたバッグの中からは医療用メスが数本。
精神安定剤のオーバードーズで意識を朦朧とさせながら「あんたを刺して死ぬつもりだった」と言う彼女を見て、さすがに足がすくみました。
呆然とする僕をよそに、仲間のひとりが携帯電話で通報してくれて、しばらくすると救急車とパトカーがサイレンを鳴らして到着。
最終的には相手のご両親に引き渡す、という形で決着がつきました。
彼女は以前にもそういった騒動を引き起こしているようで、ご両親からは何度も謝られました。それが一番心苦しかったですね。
まあ、そういう心の病気の子って別に悪い子じゃないんですよね。
ただ湧き上がる感情を自分で処理することができなかったり、自己肯定ができなかったりして、そういうのを外部に委ねてしまうから、結果的に「手首切る」とか「相手刺す」とか、そういう発想になっちゃうんです。
悪意があるわけじゃないのに結果的に悪意となってしまうから、ある意味どうしようもないんですよ。
異性の他人ではなく、家族とか、精神科の人がなんとかする領域なんですよね。
大した覚悟もなく「ボクが治してあげる」みたいなこと言う男が一番よくないんです。
結果的に身勝手なことをしてしまったなと思います。それを痛感しました。
それ以来、ネットで知り合った女子と仲良くなる時は必ず手首の傷と吐きダコの有無をチェックする癖がつきました。