男女のジェンダー差がはらむ支配と暴力をショッキングに告発する『先生の白い嘘』をはじめ、『おんなのいえ』『地獄のガールフレンド』など女性の生き方を鋭く見つめた作風で話題の漫画家・鳥飼茜さん。今、最注目の彼女に、規範にとらわれない「30代からの恋愛」のあり方を全4回で伺いました。
第2回は、「好き」の判断基準がブレがちな、大人の恋愛事情についてです。
■第1回「借り物の価値基準に振り回されないで」はこちら
面食いの自分を受け入れたらラクになった
――「恋愛向きの相手と結婚向き相手は違う」とよく言われますが、みなさんはどう思いますか?
『AM』編集M(以下、編集M) 20代半ばまでは、結婚するなら優しくてまじめな人がいいと思っていたんです。でも最近、一生ともにする相手だったら、やっぱり顔もかっこよくなきゃずっと好きでいられないだろう……とか思いはじめてしまって(笑)。
鳥飼茜さん(以下、鳥飼) 普通、逆ですよね(笑)。そこには目をつぶる人が多いのに。
編集M 性格も、まじめというより面白みがあって、映画や本の趣味も合う人じゃないと、絶対私が嫌になっちゃうだろうなって。年を重ねて余計にハードルが上がって、簡単には付き合えなくなってきちゃいました。
鳥飼 でも、それがMさんの本当の欲望なんじゃないですか? というのも、私も実はめちゃくちゃ面食いで。でも、昔、見た目がタイプで付き合っていた男性にこっぴどく振られたことを引きずって、「男性を顔で選んじゃいけない」「見た目が好みの人を選ぶと痛い目に遭う」と自分に呪いをかけていたんです。
――傷付かないように自分に嘘をついて、欲望にフタをしていた、と。
鳥飼 そうそう。すごく優しくていい人だけど、どうしても顔が好きになれない男性と付き合っていたときもありました。顔が理由で別れるなんて人としてやってはいけない、と自分に言い聞かせるんだけど、やっぱり気になる。
でもあるとき、「私はかっこいい人が好きなんだ」ということを自分に許したら、ネットやら雑誌やらでイケメンの写真をガンガン見るようになって、「美しいって良いなー」って(笑)。無理して、自分の本当の欲望にブレーキをかけていたなと気付いちゃった。
Mさんの場合も、年を重ねて理想やハードルが上がったんじゃなくて、これまでが、本来の好みではない判断基準に振り回されていたんじゃないですか?
編集M そうかもしれません……!
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