思わず「あ」と声が出てしまう皿が最初から最後まで続く。
コース1本勝負のカジュアルフレンチレストランなぞそこかしこにあるではないか、5250円も出すのだから美味しいものが出てきて当たり前だろう、
という態度で臨んだがお店を出る頃にはすっかり魅了されて夢見心地だ。
(幸運にも頭に冷静な部分が残っていた場合は次回の予約を忘れずに)
そもそも初めに頼んだ食前酒(ハーブスパークリングワイン)のグラスからして素敵すぎる。
客席とキッチンとの仕切りの無い開かれた空間も、忙しなく動き回るシェフの皆さんの姿も、照明の暗さも、
値段を抑えた分だけ省略されたほどほどのホスピタリティが気楽で良い。
あれこれ考えずに本能的に夢中になれて、無心で過ごせる場所は失恋者に適している。
「美味しいものでも食べて元気にならなくっチャ☆」程度に回復している失恋者なら友人を誘い、
キャンキャンと写真を撮りながら(料理の写真撮影のみ許可されている)FacebookやTwitterにリアルが充実してやまない様子をUPしても構わない。
普段なら甚だイラつく現象だが、回復しかけの失恋者である場合のみ目をつぶろう。
それに美味しいお店を周囲に知らせることは良いことだ。
また一通り涙を流し終えたつもりでいるが、Suicaのチャージをした瞬間などに脈絡無く涙が溢れてしまう、
でもとにかく家に居たくなく生きる気力が湧いてこず無理矢理に外出することにしたような失恋者はあえて1人で行っても問題無し。
隣席の会話に耳を傾けながら自分とは無関係な世界の話に触れると妙に落ち着くものである。
これから1ヶ月かけて、4つのレストランを紹介します。
まずは”君の心”を誰が壊したか何が壊したかを考えず、とりあえずL’ASへ行ってみてください。
来週につづきます。
Text/村井食斎
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