母性本能をドバドバ噴出するヒロイン

 本書は8篇の短編から織りなっています。ヒロインはすべて人妻およびシングルマザー。
皆、平凡な主婦で幼い子持ち。育児中のため“母乳”が出る身体にあります。しかし、出ているのは母乳だけではありません。ホルモンのバランスか、“愛を与えたい”という母性本能もドバドバ噴出中。
幼いわが子や、夫に与えるだけでは満ちたりず、持て余したその愛を受け止める相手を求めて、携帯の出会いサイトに登録したり、テレクラに電話をしたり、夫の部下を誘惑して――。

共働きの妻が抱えるもてあました母性の行方

 二十歳で結婚するまで、私は与えるより与えられるほうが多かった。そして、男から尽くしてもらうことが、気持ちよかった。
 すごく美人なわけでもないけど、私はそれなりにモテていた。色が白くておっぱいが大きく、唇がぽってりとしているのがいい、と男達は口を揃えてそう口説いてきた。そんな彼らの目を引くために、私はいつもピンクのぴっちりとしたトップスを着ていた。桃色は膨張色だから、なお一層バストが盛り上がって見えるからだ。
(『やわらかバスト』P.175 L1~6)

 そんな男のツボを心得たカナエが結婚相手に選択したのは取引先のレストランのシェフ。
しかし、料理ができる男と結婚したほうが、なにかと便利との計算は誤算で、帰りはいつも10時過ぎ。夫婦の会話もなく、週に2~3度肌をあわせることで、互いの溝を埋めていた――。

 結婚して3年も経つというのに、週に3度も夜の生活があるだなんて、なんという贅沢モノだと、世のセックスレスの奥様、および、相手のいない独身女性は声を大にして叫びたいところですが、しかし、カナエはそのセックスの内容に不満があるのです。その不満とは……(後編に続く)。

カナエが満たされないわけは後半へ続きます。

Text/大泉りか