
とにかく忙しい時期があった。下っ端ライターあるあるなのだが、大量の商品や店舗を紹介するような雑誌企画に携わった場合、20ヶ所に情報・写真を送ってもらうよう依頼し、情報に誤りがないかを確認する。しかも、依頼から中3日で入稿をするようなスケジュールだ。月曜日に依頼をした場合、「明日、火曜日に原稿を送りますので、木曜日15時までに修正箇所がありましたらご指摘ください」とやる。本当にヤバいタイミングは21時なので、6時間の余裕は作っている。
大体木曜日の午前中には「OKです」や「このように直してください」といった返事は来るものだが、何も返事がないケースも案外多い。そうすると15時から催促の電話をするのだが、かなりの割合で「席を外しております」と言われるため(2000年代前半はこのような仕事スタイル)、折り返しの電話か、修正箇所の指示メールを待つことになる。その件数が7件などということもある。
その頃、夫の愚痴を僕に言うことが多かったカオリさんは、外回りの合間に電話をかけてきて「ニノミヤくーん、今家にいる?」と聞いてくることが時々あった。勤務時間内に僕の家でエロ行為をするのである。
企業からの返事を待ちながら
この木曜日の15時過ぎ、カオリさんから電話があった。エロはするだろう、とは思ったものの企業から電話が来るかもしれない。ただ、メールの方が多いだろうという謎の決めつけがあり、「どうぞ、いらっしゃってください。ただ、1回か2回、電話が来るかもしれません」と伝えた。
かくしてその20分後、スーツ姿のカオリさんがやってきて「暑い暑い、シャワー浴びていい~? 汗かいた」と言い、彼女はシャワーへ。その間、電話の返事が来て「問題ないです」と言われた。この調子なら、エロをしていてもまぁ、問題はなさそうだな。商品紹介なんて、資料に書かれたことをベースにやるだけだから間違いようがないもんな、と軽く見ていた。
ベッドの脇に携帯電話を置き、我々はディープキスをし、彼女の胸をもんだ。彼女は僕の腿の上にまたがってきてそのまま長らくキスを続けた。するとその時、けたたましい音で電話が鳴った。気付かないのはイヤだったため、マナーモードにしていなかったのだ。
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