タイムリミットを前に人は興奮をする
当然このような状態は1ヶ月もすれば終わるわけで、再び僕はニノミヤ活動という名の間男活動を再開するのだが、1年後、瞳さんからメールが来た。夫が日本に出張に行くからその時に会わないか、という誘いだ。だが、ハノイで会うのは他の駐在員妻の目もあるためそれは避けたいという。ホーチミンであっても役所関連や支社の知人がいる可能性もあるため国外で会いたい、と書いていた。そこで隣国・タイのバンコクで会うことになった。日程は3泊4日。
ことはスムーズに進み、僕らはそこからセックス三昧の日々を過ごすわけだが、3泊目、つまり最後の夜は日本最後の夜と同様しんみりとした空気になりながら、この日も6回した。そして同じような状況で彼女は泣いてホテルを後にした。
こうしたことから分かったのは、「今日が最後のエロ」ということが決まっている場合、刻刻と迫るタイムリミットを前に人は興奮をし、「逃してはなるものか」「ギリギリまで頑張りたい」という気持ちになることが分かった。
次元はまったく違うものの、戦地に赴く兵隊にとっては「もしかしたらこれが最後の契り」とばかりに激しく求めあったのではないだろうか。どの国の兵士も同様だろうし、そう考えると「英霊」という言葉の重みを改めて感じてしまうのであった。
Text/中川淳一郎
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