セックスをしながらひたすら三国志の話をした意味不明の体験/中川淳一郎

映画『メジャーリーグ』に登場する野球選手・ジェイクの元恋人で、図書館で働くリンのことを突然思い出し、自分自身のことも思い出した。リンはジェイクが無学であることを元々バカにしていた。別れたのち、それを苦にしたジェイクは勉強をし、様々な知識を得た。

ジェイクとリンは復縁しそうになる。その復縁しそうな状況の時にエロをするのだが、リンはセックスの最中にジェイクに文学系の様々な質問をし、ジェイクはキチンとそれに答えるのである。

最中にひたすら三国志の話を…

僕もこれと似たような経験をしたことがある。セックスをしながらひたすら三国志の話をするという意味不明の体験だ。三国志が好きだという田中さんとは元々フリーランスの同業者として時々一緒にしていたのだが、ある時エロエロモードになってしまった。

「もう、今日は一緒に寝ませんか?」

こう言われ、断る理由はない。僕は田中さんと一緒に渋谷・円山町のラブホテルに入り、部屋に入るなりディープキスをし、その後はそれぞれシャワーを浴び、一戦交えることとなった。なんでこのような展開になるのか、と聞かれたら正直「そのようになった」としか言いようはない。男女のエロのきっかけなど、「酒に酔っ払っていた」とか「突然ムラムラした」ぐらいしかないのである。

毎度女性とのセックスは素晴らしい時間だし、初めての人との経験も様々な発見があり、さらには新鮮な感覚があるからこそ、僕はエロは素晴らしい行為だと思っている。普段、仕事でその人の一面を見ているだけなのに、エロになると別の面を見られるからだ。

かくして田中さんとはゆっくりと腰を動かしながら挿入を楽しんでいた。恐らく最初は40分ぐらいは入れ続けてのではないだろうか。そこから冒頭の映画『メジャーリーグ』の話になるのだ。

同じ話題で盛り上がる「三国志エロ」

彼女は三国志が好きだと言ったので、僕らは互いに性器を重ねながら、時にディープキスをしながら会話もしたのである。その時の話題は三国志だ。

「袁紹軍の猛将・顔良と文醜は二人とも関羽に殺されましたがどちらが先でしたか?」

「確か、『我が兄の仇!』と文醜が言ったので、顔良が先に殺されたのでは」

「はい、その通りです」

こんな感じでひたすら「三国志エロ」を我々は続けたのである。このセックスは非常に楽しかった。同じ趣味嗜好を持つ男女がその話題を喋りながら挿入をし続け、最後、ある程度の会話が終わったら男がイク、というのは。

この後も数回彼女とは「三国志エロ」をしたのだが、この約1年後、「ニノミヤさん、三国志をもっと好きな人と会ったの! で、結婚することになった!」と言われ、僕は田中さんからフラれたのであった。

Text/中川淳一郎