「無職の友人男」が一番誘いやすい!外回り中の女性とラブホテルへ/中川淳一郎

無職になるとエロに誘われる回数が増える、ということをしばらくの無職生活で学んだ。というのも、仕事をしている女性は日中、外回りをすることが多く、そのまま会社には帰りたくない。何らかの営業活動をしたことにし、定時前に会社に戻るような策略を考えることが多々あったのだ。

その間、一人で喫茶店に行きコーヒーを飲んだりするのもつまらないので、暇な人間を誘おうとする。専業主婦の女友達は大抵子育てが大変なので付き合ってもらえない。仮に自宅で会ってもらえたとしよう。

しかし、会社員生活のストレスを少しでも減らすべくオフィスに戻る時間を遅くしようとしているのに、子育て中の友人の家に行ったとしても、自分の話を聞いてくれるのは難しい。何しろ赤ちゃんや保育園前の子供が泣いたりものをこぼしたりウンコをしたりして、とにかくお母さんは友人どころではなくなる。

「無職の友人男」がちょうどいい

そういった時「誰かいないかな……」と若い会社員女性が自分の知り合いリストを探るとそこに登場するのが「無職の友人男」なのだ。さすがに真面目な勤務人を誘っても95%は断られるだろう。何しろこちらは暇なものだから、電話をかけたら必ず出る。

「ニノミヤ君、今から会える?」
「いいよ。今どこ?」
「五反田。確か、渋谷に近いところに住んでたよね」
「歩いて20分ぐらいかな」
「じゃあ、25分後にハチ公前で待ち合わせしよう」

こんな感じで待ち合わせが決まる。こちらとしても、とにかくやることがないものだからこのような誘いはありがたい。まぁ、喫茶店に行くんだろうな、と思いつつも飲み屋か、あわよくばラブホテルに行ければいいな、と淡い期待を持ちこちらも出かける準備をサッサと済ませ、外に出る。

そうしてハチ公前に行くとキチンとスーツを着て会社の紙袋やら封筒を持った彼女が手を振って待っている。なんとなく足は109の方に向かっていくが、その間に誘ってきた彼女の意図を聞かなくてはいけない。

「打ち合わせと打ち合わせの合間かなんかなの?」
「う~ん、それは終わって会社に帰る前なんだけど、あんまり雰囲気良くないんで、オフィスにいたくないんだよね。会社には別の打ち合わせがあるってことにしてるんだ」
「じゃあ、酒飲みに行く?」
「いや、バレるでしょ!」
「じゃあ、散歩でもすっか」

そこで彼女は少し考えてからラブホテルへ行こうと言うのだ。疲れているので少し寝たいし、セックスをするかどうかは分からないけど、落ち着けるからそれが一番いい、とのこと。