キュウリで二人の意見が分かれ…

「やっぱ小さめのナスがいいよね!」

「だよね~!」

「ちょっと形がチンコっぽいしさ、ナスはいいよね~」

と、ナスに対しては意見の一致が見られたのだが、キュウリになると二人の意見は明確に分かれた。浩子はこう言った。

「ナスもいいけどさ、やっぱキュウリよ。丁度いいサイズのものが時々あるから私はソレをスーパーで買うの」

これを聞いた初枝は顔をしかめ、「ヤダヤダヤダ!」と手を大袈裟に振った。僕はこの段階で女性のオナニーというものが一体どのようなメカニズムで気持ちがいいのかよく分かっていなかったのだが、初枝は恐怖におののいている。

「なんでよ? キュウリ、ナスよりもいいと私は思うよ」

浩子がこう言うと初枝はこう返した。

「あのさ、アンタは東京の人間だからそう言えるかもしれないけど、岡山の田舎だとキュウリってトゲがすごいの。東京のスーパーで売ってるキュウリはツルツルでトゲも突起もなくてオナニーに使えるかもしれないけどさ、田舎のキュウリは絶対にそんなことできない!

だって、デリケートな粘膜をトゲがこすっていくのよ。そんなことしたら血まみれになっちゃうじゃないの! とにかく私はキュウリでオナニーは絶対にできない!」

浩子は「なるほど、それはそうよね~」と納得した様子だったが、僕としては「一体こいつらは何を真剣に議論しているんだ……」という感想しか持たなかったこの日の飲み会だった。

実は初枝はぼくの好みの「小柄・巨乳・目が大きい」というタイプだった。大学卒業の直前にこの3人飲み会をした時は「いつかヤろーね! 岡山で待ってるよ~」と言われたが、その日は来ることはなかった。残りの人生、その日が来ることを楽しみにしている。

Text/中川淳一郎