抵抗をする、ウブだった僕
「や、やめてください!」
「いいでしょ! 減るものじゃないし! あと、アンタ、勃起してきたじゃない! 本当は気持ちいいんでしょ!」
「あぁ、もう友達が待ってるんで!」
「ちょっと生で触らせなさい」
そう言うと彼女はパンツの中に手を入れ、僕のアソコを直接触ってしごいてきた。確かに気持ちはいいものの、コレは異常な状況である。なんで初対面の酔っ払った女性から友人との約束をすっぽかすよう指示され、暗闇でアソコを触られ、挙句の果てにはホテルに誘われるのだ!
結局このときは「すいませーん! もう行きます!」と慌てて走って逃げたのだが、もっとも印象に残っているのは、彼女とディープキスをしたときの臭いだ。多分、アタリメを大量に食べていたのだろう。とにかく口の臭いが干したイカ臭かったのである。あの臭いはあれから25年経った今でも思い出すことができるほど強烈なインパクトがあった。
あと、余談だが、立川駅北口に「シネマ通り」という通りがあったが、その通りの突き当りはT字路になっていた。ボロい家屋風のものが建っており、その間の路地には70代と見られる厚化粧の老婆が常に椅子に座っていた。一体あの老婆はなんだったのだろうか……。客引きなのか、あるいは本人が色々するのか……。
とにかく1990年代以前の立川は怪しい街だった。
Text/中川淳一郎
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