結婚の常識として「嫁姑はうまくいかない」もあるが、私と義母は近所に住んで週3回は会いつつ、そこそこ円満な関係を築いている。

その理由として「実母が抜群に困った人だったから」が挙げられる。実母にさんざん苦労させられたため「あれに比べたら汗もかかぬわ」と余裕で思えるのだ。

逆に実の親が人格者で親子仲が良ければ、どうしても比べてしまって不満を抱くのかもしれない。そう考えると、毒親育ちにもメリットがあると言える。

それに、基本的に他人の方がムカつかないものだ。

義母も世代的に見栄っ張りだし拝金主義だし差別的な発言も多い。これが実母だったら「なんでそんなこと言うわけ?!」と絞め殺したくなるが、他人の親だと「まあ、おばあさんだしな」とスルーできる。

なにより、義母はシングルマザーで苦労してきた人なので、現金に弱い。　

世間的に見れば、私は一点の曇りもない「できそこないの嫁」だが、少しばかりの稼ぎはある。本当に少しばかりなのが残念だが、たまに義母にお小遣いをあげると「キャー！ほんとに？いいの？ありがとう！！」と飛び上がって喜ぶ。

要するに買収しているわけだが、金で円満な嫁姑関係が買えるなら安いものだ。

「血の繋がった家族なのに…」と家族の不仲を嘆く人は多いが、血が繋がってるからややこしいのだ。

私は実の両親とはどうやってもうまくいかず、何の血の繋がりもない夫や義母と家族ユニットを組んで仲良く暮らしている。

「血は水よりも濃い」という言葉は「ドロドロした血よりサラサラした水の方が、ややこしくなくていいよね」という意味なんじゃないか。

とはいえ、夫と義母を見ていると「血は争えない」と実感することはある。

たとえば以前「夫は片仮名が苦手で、引っ越しのダンボールに書いたワレモノの字がワレチノ・ワレモレなど微妙に全部間違っていた」と書いたが、義母も「地デジ（地上デジタル）」を「ちれじ」「ちぢれ」などずっと言い間違えていて、DNAの連鎖を感じた。

片仮名は苦手だが、アラビア語の練習に励んでいる夫。

会社でもパソコンの待ち受け画面をコーランにしていたら、「テロリスト」というあだ名がついたらしい。

だが先日「部長の机の引き出しからテラフォーマーが出現する」というアニマルパニックが起こった際、わざわざ他部署から呼び出された夫がサッと始末したところ、「英雄」と呼ばれるようになったそうだ。

子どもの頃から虫を捕まえるのが得意だった夫。

ある時、帰宅した夫を玄関に迎えにいくと、片手をグーにして「手を出して」とおっしゃる。それから「はい、プレゼント」と手のひらに載せられたのは、巨大なカミキリムシだった。

その時は「ギャー！！！！」と叫んで腰を抜かしかけたが、たまにはこんなサプライズも刺激的で悪くない。

4℃のアクセサリーに喜べない人は、カミキリムシをねだってみてはどうだろうか。

Text/アルテイシア
※2017年1月10日に「TOFUFU」で掲載しました

　入手困難となっていたアルテイシアさんのデビュー作が待ちに待った電子書籍化！
本連載でおなじみの59番さんとの出会いが綴られています。

　59番さんと出会う以前の恋愛経験を綴ったこちらも電子書籍化！
あわせてチェック！

　アルテイシアさんが自信がない・出会いがない・付き合えない・好きにならない・もう若くない・幸せな恋ができない・SEXしたことがない・女らしくできない・結婚できない…そんな悩みを解決。
パートナーを得た女性も、より魅力的な女性になるためにどうぞ♪