夫からまさかのダメ出し
前回【夫婦ゲンカと酸素欠乏症とパンティ事件】の原稿を書いた後、夫に「元彼には下ネタ禁止令を出されたが、キミの前では自由に下ネタを話せてよかった」と言うと「キミはもっと下ネタを頑張った方がいいな」とまさかのダメ出しをされた。
「下ネタをもっと頑張るってどういうこと?」
「女性が下ネタを話すと、ギラギラして喜ぶ男が多いのは事実だ。男をギラギラさせない下ネタ…それはズバリ、ウンコだ!」
「う、ウンコ…?」
「たとえばドイツのある村では下水が逆流して、一晩で村中がウンコまみれになったらしい。そういう話をすればよい」
「すればよい、のか?」
「あの村、なんて名前だったっけ?X51のサイトで調べてみよっと」
このように、夫の知識の多くは『X51』や『ムー』で出来ている。
女がSFや洋楽に詳しいと「どうせ男の影響だろ?」と決めつける輩がいて「ふざけんな♡」と首をへし折りたくなるが、私がオカルト・都市伝説・UMAに詳しくなったのは、明らかに夫の影響だ。
夫と出会った頃、私はチュパカブラすら知らなくて「こんなに有名なUMAを知らないなんて大丈夫?」と心配すらされた。
その後、夫の家に遊びに行き、本棚に並ぶムーを読んで「へえ~世界にはこんなに沢山のUMAがいるのか…つか、いるのか?」と感心した。
ムーには「人間の無限の可能性を引き出す 神の血ペンダント」の広告や「鼻クソ健康法(鼻クソを少しずつ食べて免疫力を上げる方法)」などが載っており「こんなの読んでて、こいつこそ大丈夫か?」と心配になった。
だが時の流れとは偉大なもので、夫とショッピングに行った時も
「このシャツ試着してみたら?」
「そんなの小さすぎて入らない、オラン・ペンデク用じゃないのか?」
「はいはい、スマトラ島に生息すると言われる小柄な獣人ね」
と、さらっと返せるようになった。
人間として成長したと言えるかは微妙だが、UMAクイズ選手権に出場したら、一回戦は勝ち上がれると思う。
ムー以外にも、夫の部屋の本棚には『KGB殺人術』『傭兵マニュアル』『アルカイダの真実』といった書籍が並び、またナイフやエアガンもコレクションしていて、「昔は山奥でナイフ投げの練習をしたなあ」という言葉を聞き「こいつ別の意味でも大丈夫か?」と思った。
以前「近所の通学路に不審者が現われたらしい」と夫に言うと「よし、パトロールしてこよう」と黒ずくめの恰好で出かけようとしたので「おまえが捕まるぞ!」と全力で阻止した。
もし家宅捜索されたら、夫の本棚にはアラビア語の練習帳とかもあるので、わりと本気でマズいと思う。
ハラハラさせられることもあるが、夫は「一家に一台、池上彰」という感じで、とても便利な存在だ。国際情勢や世界の紛争や宗教問題…etc、さまざまな分野に精通しているため、「インド密教とチベット仏教の違いって何?」といった質問にも答えてくれる。
友達の子どもにも「クリオネって何?」と質問されて「ハダカカメガイという巻貝の仲間、羽みたいな部分は翼足と呼ばれるヒレなんだよ」と答えて尊敬されていた。
だが同じ調子で「なあなあ、キッザニア行った?」と聞かれて「俺キッザニア行く年ちゃうねん」と答えていたので、大きなお友達と思われているようだ。