「ウホッ!ガタイのいい男」

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 アサシン嬢の言うとおり、その手の男は抵抗しなさそうな、自分より弱そうな女をターゲットにする。よって見た目を強そうにすることは、クズ男に対するウォールマリアの役割を果たす。

 彼らも神取忍みたいな女性にはビビッてオラオラできないだろう。

 昔、夫に「男らしいとよく言われる」と言ったら「どこが?男らしいというのは、神取忍みたいな女性をいうんだよ」と返された。たしかに私も神取忍と比べたら、か弱い乙女に見えるかもしれない。

 が、私はバーで男友達と飲んでいたら「女王様と奴隷ですか?」と聞かれたりなど、ゆるふわとは対極のこわもて系のルックスだ。かつ下着屋の店員さんに「水泳されてましたか?」と聞かれるガッチリ体型で、骨格がでかく、手も足もでかい。

「抱きしめたら折れそう」どころか「逆にサバ折りされそう」な己の体型に、長年コンプレックスを抱いてきた。

 漫画ハチクロで、竹本がはぐちゃんに自分のTシャツを貸して「僕のTシャツが彼女にはワンピースになってしまうんだ…」とキュンとする場面があるが、私は男にシャツを借りてもジャストフィット、場合によってはツンツルテンになってしまう。それゆえ、はぐちゃんに対して「ケッ、虫も殺さぬ天然少女ぶりやがって」と呪詛を吐くうちに全巻読み終えてしまった。

 これは一点の曇りもない「妬み」だが、玄関に並ぶ彼氏の靴より自分の靴がでかかったり、手をつないだ時に自分の手の方がごっついのは、切ないものだ。しかもガッチリ体型=力が強いと判断されるため、荷物も持ってもらえないし、瓶のふたも開けてもらえない。

 そんなメスゴリラ的ポジションで生きてきた者としては、小柄で華奢な女子に憧れるし、「素手で闘ったら勝つだろうが、女としては負けてる感」を抱いてきた。

 だから夫と付き合って「ウホッ!ガタイのいい男」とドラミングして喜んだのだ。

 マッチョな夫といると、自分が小柄であるかのように錯覚できる。しかも彼は身長2メートルのブラジル人選手などと対戦しているため「キミは全然ごつくない、小さいよ」と言ってくれる。たしかに私も2メートルのブラジル人に比べたら小さいだろう。

 また、私はごつい骨格にたわわに肉が実っているのだが、夫は付き合った当初から「全然太ってない、痩せなくていい」と言ってくれて「気持ちの優しい子やな」と思っていた。

 だが夫の部屋のエロ本ライブラリーを見て、私は気づいた。

「そうか…お前、デブ専か」