年をとると孤独が辛くなる説

「ゎたしゎ寂しいと死んじゃぅぴょん♡」とか言える人間は死なない。私は寂しいと声を発する気力もなくなる。

 ちなみに、ウサギは寂しくても死なないらしい。ネットで読んだ獣医さんの話によると「ウサギは12時間以上絶食すると胃腸の動きが停滞し、危険な状態になることがある」とのこと。つまり普通にメシを食わないと死ぬのだ。

 私は寂しいとメシを食う気力もなくなるので、ウサギよりも弱い生命体だ。そのうえ「寂しいのはイヤだが、好きでもない男と暮らすのは無理」だからややこしい。

 30歳で夫と結婚した当初は「もし夫が早死にしたら、夫以上に好きになれる相手は見つからないだろうし、面倒くさいから一緒に死んじゃおうかな」とわりと本気で思っていた。だが四十路のJJ(熟女)となり「いや、案外イケそうやな」と思うようになった。

 夫に出会ってメンが安定したことも大きい。それに加えて、若い頃はメンが繊細で極細だったのが、加齢によってメンが太くなった。関西のおばちゃんの図太さが身について、孤独に強くなってきた。

 「老後、孤独になるのが怖い」とよく言われるが、若い頃の孤独の方がキツいと思う。
年齢を重ねることで、孤独に対する耐性がついてくる。それに周りが家族に囲まれている中、自分ひとり孤独なのは超キツい。

 だが、老人はだいたい孤独なものだ。現時点で65歳以上の女性の55%がシングル(未婚・離婚・死別含む)らしいので、我々の老後はお一人様がもっと増えるだろう。
となると「寂しいのは俺だけじゃなし」という気になって、寂しくなくなるんじゃないか。
老人になると体は弱るが、元気いっぱいの時に1人で引きこもっているよりも、「まあ体もしんどいし」と言い訳もできる気がする。

 個人の性格や状況によるだろうが、「年をとると孤独が辛くなる説」が正しいとは限らない。

 私の場合は「老後は案外イケそうやな」と思った。もし夫が早死にしても、遊んでくれる女友達と、一緒に寝てくれる猫がいれば大丈夫じゃないかと。もう少しボリュームが欲しければ、チベタン・マスチフとか飼うといいかもしれない。

 幸い今は夫が存命なので、毎晩、夫の腕枕で就寝している。
ある夜、夫が突然ガバッと起き上がったので「どうした、夢精でもしたか?」と聞くと「いや、試合している夢を見た…」と寝ぼけながら呟いていた。格闘家は夢の中でも闘っているらしい。
またある夜、苦しくて目を覚ますと、夫に送り襟締めをかけられていた。「極まってる…!」と腕をタップすると夫も目を覚ましたが、ヘタすると落とされていたかもしれない。

 夫婦同衾も命がけだ。それでもやはり、私にとっては2兆円以上の価値があると思うのだ。

※2017年11月28日に「TOFUFU」で掲載しました。

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