トキメキ補正と愛情補正
私が筋骨隆々のマタギに勃起する一方、担当アサシン嬢の好みは「ガリガリのバンドマン」だという。
独身時代はガリガリのバンドマンと付き合っていたそうだが、本人いわく「見た目が好みすぎると中身がダメでも許しちゃうんですよ。ムカついても怒れなくて、そんな関係で一生暮らすのはキツいなと」。
一方、現在のご夫君はぽっちゃりクマ系で「全然好みじゃなかったけど、試しに付き合ったら好きになりました。見た目が好みじゃないのに好きになるのは、中身が最高ってことですね」とのこと。
周りをみても「見た目は好みじゃなかったけど結婚した今は超ラブラブ♡」という夫婦は多い。
女友達も「もともと塩顔&細身が好みだけど、夫は西郷どん似で真逆だった。でも今は薩摩フェイスが愛しく思える」と言う。
男友達も妻のことを出会った当時は「柔道の田村亮子似」と言っていたが、結婚した今は「フィギュアスケートの浅田真央似」と言っている。両者はまるで別人だが、これも愛情補正のなせる技だろう。
好きには「ときめき的な好き」もあるが「相手のいいところをいっぱい知ってるから好き」もある。
私も夫と出会った時は「いい体してるけど顔は好みじゃないし、1ミリもときめかねえな」と思っていたが、12年たった今では夫の顔が谷垣ニシパに見えている。単なる老眼かもしれないが。
私の場合はトキメキ補正がなかったことで、ありのままの相手を見られたのがよかった。逆にトキメキ補正が効きすぎると危険だ。「顔がモロ好みの夫と結婚したが、浮気するし家事育児はしないし最悪、殺したい」という知り合いの女子もいる。
見た目は絶対譲れない人もいるだろうし、見た目で選ぶのが悪いわけじゃない。ただ「見た目が好みなら中身は問わず、浮気・モラハラ・DV、なんでもオッケー!」みたいになると、結婚生活は地獄のデスロードになるだろう。
とはいえ、人の好みは理屈じゃないから難しい。
夫に「なんでデブが好きなの?」と聞くと、自分でもわからないという。ちなみに義母殿はスリムなので、マザコンが源流というわけではなさそうだ。
そして夫は「デブ、好きだー!!」と私にピロリロリンしたわけではないそうだ。私は美容体重以上健康体重未満の健康なデブだが、夫的には「まあまあ痩せてる」という認識らしい。ひょっとしてアフリカ出身なのだろうか。
ネットで「太った女性がモテる国1位は西アフリカのモーリタニア」という記事を読んだ。
記事によると「モーリタニアは国土の9割が砂漠という過酷な環境のため、昔から女性の肥満は美しさの象徴。かつては適齢期前の少女に高脂肪のラクダのミルク等をとらせて太らせる習慣があったほど」なんだとか。
肥満が美しさの象徴とか言われたら、私は張り切って太る。痩せるのは苦手だが太るのは得意科目だし、デブ界の東大に入る自信がある。だからマスター、高脂肪のラクダのミルクちょうだい、ロックで!と言いたいところだが、肥満には成人病などのリスクが伴う。
病気になると、とてもつらい。
やはり夫がデブ専だからといって練乳ストレートをジョッキでいったりせず、健康なデブを維持したいと思う。
Text/アルテイシア
※2017年6月13日に「TOFUFU」で掲載しました
最新刊発売!
過去10年間に執筆したエロコラムが詰まった『アルテイシアの夜の女子会』が2018年2月7日に発売。表紙はTOFUFUでも連載してくださっているカレー沢薫さんのイラスト。BL研究家・金田淳子さん、妖怪作家・ぱぷりこさんとの対談も収録。
待望の電子書籍化!
入手困難となっていたアルテイシアさんのデビュー作が待ちに待った電子書籍化!
本連載でおなじみの59番さんとの出会いが綴られています。
59番さんと出会う以前の恋愛経験を綴ったこちらも電子書籍化!
あわせてチェック!
大ヒット発売中!
アルテイシアさんが自信がない・出会いがない・付き合えない・好きにならない・もう若くない・幸せな恋ができない・SEXしたことがない・女らしくできない・結婚できない…そんな悩みを解決。
パートナーを得た女性も、より魅力的な女性になるためにどうぞ♪