血統書付きの逸材
インフルエンザのため1週間ほど会社を休んだ夫だが、幸い症状は軽めだったので、ずっとミニファミコンをしていた。でっかい夫がちっさいコントローラーを操作する姿はガリバー旅行記のようだった。
魔界村・ゼルダの伝説・悪魔城ドラキュラ…と次々クリアしていく夫を「ゲームセンターあらしみたい!すごいね!ヒューヒューだよ!」と褒めちぎる妻。私は夫を褒めるのが趣味なのだ。
そのうち自分もやってみよかという気になり、30年ぶりにスーパーマリオをプレイしたところ、3面で10機のマリオを失った。
そんなコンスコン状態の妻を「反射神経がなさすぎる、これまでどうやって生きてきたんだ?」とディスる夫。
子どもの頃から、私は群を抜いてとろかった。
幼稚園時代、スキップができなかったため「体に異常があるかもしれない、病院で診てもらった方がいいのでは」と先生に提案されるなど、血統書付きの逸材なのだ。
ドッチボールではつねに顔面で受ける係だったし、「ゴム飛びをしていてドブに落ちる」というウルトラCを決めたこともある。小6の時、子ども用のオモチャのすべり台から落ちて、眉の上を5針縫うケガをしたことも。
体育の時間、全力疾走しているのに「ふざけてないでマジメに走れ」と教師に怒られたりもしたが、今となっては「うるせえ!遺伝子様のせいだから仕方ねえだろ!」と怒鳴り返したいところだ。
大人になった今もスポーツ全般苦手だし、自転車もろくに乗れないし、車の運転もできない。
そんな私が唯一まともにできるスポーツが、セックスだった。
鵯越えの逆落とし(ひよどりごえのさかおとし)など、義経のように華麗な技を決めてたわけじゃないが、わりと満足のいくパフォーマンスができていたと思う。
それで「自分にも得意な種目があるんだ!」と自信につながったので、ズベってみるのも悪いことばかりではない。
私には同い年の双子の弟がいるが、弟は子どもの頃から運動神経がよかった。また元モデルの彼は食べても太らない体質で「どうやったらそんなに太れるの?」と聞かれ、殺意を覚えたこともある。弟殺しのカインもデブだったんじゃないか。
物心ついた頃から「弟くんはハーフみたい!お姉ちゃんは…よく肥えて丈夫そう」と牛のような褒められ方しかしなかった私。
上杉兄弟や宗兄弟のような一卵性双生児はまったく同じDNAを持っているが、二卵性双生児はDNAが異なる。なんてことは言われなくとも知っとるわ!という話だ。
弟を見ていると「同じ日に同じ親から生まれて同じモノを食って育ったのに、こんなにも違うものか」と感じる。
その中でも一番の違いは、性欲だ。
弟は「植物のように静かに暮らしたい」と光合成しながら生きている。顕微鏡で血液を調べたら葉緑体が見つかるだろう。
そんな弟に「オナニーはしてるのかね?」と聞くと「溜めすぎると前立腺がんのリスクが高まると聞いたので、健康のために月イチぐらいやってます」と静かに返された。きっと精液じゃなく樹液を出しているのだろう。
一方、姉は執筆の合間に自慰ブレイクしては「スッとしたぜ」とエシディシのようにスッキリするのが日課だ。