海に囲まれているせいか、どこか離れ小島のようなイメージが漂うお台場。
新橋からゆりかもめに乗って向かうと、レインボーブリッジに差し掛かった瞬間、同乗の家族連れが「わぁ!」と歓声をあげた。
なるほど確かに、海の向こうに煌めくお台場は、どこか桃源郷じみて見える。
子供たちは「フジテレビだ!フジテレビだ!」と騒ぎ、ゆりかもめ内はじわじわと希望のようなもので満たされていく。
ああ、この先でなにかステキなことが起きるんじゃないか。
彼らがお台場に投影している希望というのは、芸能界に対する漠然とした憧れの気持ちだと思います。
普段の生活からは想像もできないような、華やかな夢の世界。
近づこうとしても近づけない、選ばれ者のみが立ち入れる世界。
そんな世界が、年に一度だけ民衆を招き入れるのが、夏の風物詩・お台場合衆国。
言わずと知れたフジテレビ主催の人気イベントですが、今回はそんな合衆国に殺到する、庶民たちの熱狂を見に行きました。
「楽しくなければお台場じゃない!冒険しなけりゃ夏じゃない!」
不況や自然災害ですっかり参った我々を鼓舞すようなスローガンは、その暴力的な勢いに任せて、庶民から入場料1700円をむしり取るというおそろしいプロパガンダになっていた。
客層は家族連れがほとんどで、なかには小中学生の仲良しグループの姿なんかも見られましたが、全員に共通していたのが、妙に興奮した表情。
まるで「来たぞ、俺はとうとうこの世界に!」とでも叫び出しそうな、覇者の顔になっていたのです。
恥ずかしいような、尊いようななんとも言えない気持ちにさせられつつ、エスカレーターを昇ってビルの中へ。
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