眩い太陽の光の中、海辺を裸足で駆け抜け、大好きな恋人と抱き合う。はい、めでたしめでたし。
って、そんな青春ありえなかったよ。青春映画はどれもウソばっか。
みんなリア充で勝ち組でモテ男女の青春で、あの頃のクラスのようにどれも馴染めないものばかり。
だけど、これらの作品に登場する女の子たちとは仲良くなれるかも。
自意識過剰で、繊細で、不満ばかり。
10代の思春期をこじらせちゃってる系女子は、今の自分とどこかしら繋がってるのかも。
そんなイタくてどうしようもない、少女たちの頭の中を覗いてみましょう。
“ゴースト”のような空虚な世界とは 『ゴーストワールド』
一本目は、人気オルタナティブコミック作家ダニエル・クロウズのコミックを映画化した作品。
周囲と馴染めない主人公の女の子は、自意識の殻の中で思春期をこじらせちゃっています。
ストーリー
おしゃれで絵を描くのが大好きなイーニド(ソーラ・バーチ)は、自分よりちょっとモテる幼なじみのレベッカ(スカーレット・ヨハンソン)と仲良し。
高校を卒業しても進路が定まらないイーニドは、冴えない中年の男シーモア(スティーブ・ブシェミ)をからかいつつも、次第に親しくなっていく。
やがて彼と肉体関係を持つが……。
「私は他の人とは違う!」その自意識が、彼女に涙を流させる
夢と目標に向かうクラスメイトを鼻で笑うイーニドは、とにかくひねくれている。
マニアックな古いブルースを好み、斬新な色に髪を染め、不評だったらすぐに色を戻す。そして凝り固まった自意識の中、一人の世界に閉じこもっていく。
世間の誰もが無視するであろうシーモアの相手をすることで「自分は他の人とは違う」と酔いしれるし、手に入れてしまえばあっさりと関係を絶つ。で、相手を傷つけることでますます孤独になる。
こういった悪循環を繰り返してしまう彼女は、まるで幸せとはほど遠い世界にいる。
あまりの寂しさに、強情で意地っ張りのはずのイーニドが号泣するシーンがある。
周囲と馴染み、例えばFacebookの写真にたくさんタグ付けされたりする人には、涙してしまうイーニドの気持ちが分からないかもしれない。
まったくタグ付けされず、素直にいいね!ボタンを押せない人こそ、イーニドと一緒に号泣してしまうのでは?
その素直な涙には、きっと心を打たれてしまうはずです。
“ゴーストワールド”が意味するものとは?
一見、ホラー映画とも思わせる本作のタイトル。
化物も幽霊も出てこないのに“ゴースト”とは一体何なのか。その意味ははっきりと解説されていない。
ただ、この映画には慢性的な恐怖が根底に流れているのです。
10代にとって、先行きが見えない青春こそがホラーといえるのでしょう。
生きているのか死んでいるのか、まるではっきりしない自画像。イーニドは絵を描くのは好きでも、自分の姿を描けないでいます。
自己イメージが無色透明で、まるで幽霊のように彷徨い歩く。周囲に馴染めない代わりに、不明瞭な未来とともにこのタイトルがしっくり馴染んでしまうのです。
終盤、行く宛てもなくバスに乗り込む彼女の切ない後ろ姿から、“ゴーストワールド”の意味を初めて噛み締めることになるでしょう。
『ゴーストワールド』DVD発売中
価格:1,890円(税込)
発売:アスミック・エース
販売:角川エンタテインメント