竹久夢二は大正ロマンを代表する独特な印象の美人画画家として有名ですが、小唄や詩、童話なども多く手がけています。
というのも実は画家となる前、夢二は詩人になりたいという夢を抱いていました。そして、画家として才能を華開かせた後、文筆の分野でも活躍を始めたのです。
本書では、「恋するこころ」「ひとりの日」など全4章に別れ、夢二が傷つきやすく繊細な乙女のために書いた詩が収録されています。
情感にあふれた優しい彼は、その人生においても、多くの恋に落ちてきました。その経験を元にした幻想的で切ない恋の詩の数々は、あなたの恋心をより盛り上げてもくれ、また傷ついた心を優しくなぐさめてもくれるでしょう。
また、この作品の特徴は、詩以外にも夢二が恋人を思い書き記した日記とエッセイも掲載されていることです。
その中でもとりわけ素敵なのが、『キネマ』大正13年7月号に掲載されたエッセイ。
ある日、自分の部屋で彼女が顔をおおって何も言わなくなる。
彼女は、彼が自分以外の女性を見ることがいやで、あなたの目を縫ってしまいたいという詩を鉛筆で紙に書きつけていました。
それを見た彼は、ある詩をノートに書きつけ彼女の膝におく。
それは、あなたのために私は盲目になりましょう、でもあなたを見る時どうすれば? というものでした。
それを見た彼女は笑って涙をこぼす……。
短いエッセイの中に、恋のやるせなさや喜びが同時に表現されています。
「恋」を繊細に表現する夢二の言葉の世界をぜひ体験してみて。
書名:竹久夢二・乙女詩集・恋
著者:石川桂子/編
発行:河出書房新社
価格:¥1470
Text/AM編集部