「食べることは生きること」亡き母からの教えを胸に──『はなちゃんのみそ汁』

はなちゃんのみそ汁 安武信吾・千恵・はな 文藝春秋 sota-k

   安武千恵さんが、がん闘病中に綴ったブログ「早寝早起き玄米生活」の文章に、夫である信吾さんがその時の心中や夫からみた千恵さんの様子を綴っている著書。
結婚前に乳がんを発病した千恵さんが信吾さんに支えられて治療をしていく様子から綴られていきます。治療を終え、一命をとりとめた千恵さんが妊娠。女性ホルモンの関係で、再発のリスクの中、愛娘である、はなちゃんを産みます。その後、再発。肺への転移が分かってもなお、千恵さんは娘を産んでよかったと綴っています。娘のためにより生きたいと強く思うことができるから。

 辛いホルモン治療の中、愛する娘さんに手をあげてしまったこと、病気のことで夫・信吾さんと喧嘩をしてしまったこと…。決して綺麗ごとだけではない日々の出来事が綴られています。しかし、その中でも食に対して、真摯に向き合い、自然治療に情熱を燃やす姿勢に胸をうたれます。
「食べることは生きること。1人でも生きられる力を身につけて」と、33歳で亡くなった母との約束を守るため、はなちゃんは毎日みそ汁を作ります。余命を覚悟した千恵さんが娘に遺した食と躾、はなちゃんと2人家族になった現在までが詰まっています。

 死を覚悟してもなお娘を第一に考える母の愛。母は強しといいますが、これほどの覚悟で子を育てている人はいるのでしょうか。生きている…その日常の幸せを取り戻すために、少しでも多くの方に読んでいただきたいです。

はなちゃんのみそ汁 安武信吾・千恵・はな 文藝春秋

書名:『はなちゃんのみそ汁』
著者:安武信吾・千恵・はな
発行:文藝春秋
価格:¥1,365(税込)

Text/AM編集部