くだらない罪悪感を抱えたまま墓場まで持っていく

少々、想像力が乏しすぎやしませんか?
真実を告げることで、“彼に嫌われてしまうかもしれない”という彼の感情の変化に不安になることよりも先に、今さらどうしたって変えられないあなたの過去のことを彼はどうすることもできずに悩みながら過ごすとか、長い間信頼していた恋人に嘘をつかれていたという事実に裏切られた気持ちになってしまうとか、そういう彼自身のメンタルに良くない影響を与えてしまう可能性を考えられていない時点で、随分自分本位な相談だなと思います。

そもそも、結婚するからといって、全てを曝け出して隠し事がゼロの状態である必要はありません。
もちろん、金銭面や健康面など、一緒に生活するうえでお互いに関係することであれば、誤魔化さずに話すべきだとは思います。
でも、過去の恥ずかしい行いだとか、若さゆえの失敗だとか、人間関係で躓いてしまったことだとか、思い出したくもない黒歴史だとかって、言わなくちゃいけない必須事項ではないですよね。
ちなみに、わたしは夫に全てを話しているわけではないですし、夫の過去を全て知っているわけでもありません。
お互い別に知りたいとは思いませんし、知ったところでなんとも思わないでしょう。
それでも、結婚生活は充分すぎるほど成り立っています。

もしわたしがあなたの立場だったらわざわざ自分から夫に話すことはせず、くだらない罪悪感を抱えたまま墓場まで持っていくでしょうね。
逆の立場で、夫がわたしに「実は付き合ってない女性と関係を持ったことがあるんだ……嘘ついててごめん……」なんて神妙な面持ちで言われたとして、「は? だから?」と経験人数の多さに傷つくことはないですし、嘘をつかれていたことにショックを受けるより先に、この人は自分の過去の経験から生じた罪悪感を抱えきれずにわたしに話すことで罪の意識を半分こして楽になりたいんだな、クソダセェな、と自分本位でしかない行為自体に幻滅してしまうと思います。

勘違いしないでほしいのですが、嘘をつくことと、あえて言わないことは違います。
また、正直でいることと、なんでもかんでも相手に話すことも違います。

あなたはきっと、彼にとって誠実な自分でありたいのでしょう。
それは、とても素晴らしいことだと思います。
でも「誠実」ってなんだろう、と考えたときに、一切嘘をつかず、後ろ暗い秘密を持たず、常に全てを正直に話すことだけをイメージしていませんか。
わたしも、できる限りそうあるべきだとは思いますが、それを完璧にやり続けられている人ってきっとそんなに多くはないはず。
誰にだって過去があり、今の自分が出来上がるまでいろんなしくじりを繰り返して当然だからです。
では、その完璧ではない人たちがみんな誠実じゃないかというと決してそうではありません。

自分がかつて犯した過ちや失態を誰かに伝えたところで今更どうすることもできず、ただ聞かされた人の苦しみや悩みが増えるだけになってしまうだけのものを、自分ひとりできちんと受け止め、わざわざ誰かに言うことなく、ぞわぞわして宙ぶらりんの気持ちをずっと抱え続けること。
そうやって自分の中で落とし前をつけることで、完璧ではない人間はできるうる最低限の誠実さを示していくのです。
すでに嘘をついたしまったことで罪悪感を抱えているあなたが、これから先彼に対してどう接することが最大限でき得る誠実なのかを、よく考えてみて下さい。