社会に向けた挑戦的アートに衝撃!『ひっくりかえる ―Turning around― 展』

 みなさんは覚えていますか? 昨年の3月、渋谷駅にある岡本太郎が描いた壁画『明日の神話』に、原発事故を想起させる絵が設置されて話題になったことを。
その後、これがあるアーティストによるゲリラパフォーマンスだったことがわかると、「不謹慎だ」「いや、アートによる問題提起だ」「ただの売名行為にすぎない」といった議論を巻き起こしました。
美術館に展示された作品を静かに鑑賞するのもアートですが、世間を挑発するようなパフォーマンスで問題を投げかけるのもアートの重要な役割のひとつ。
社会を騒がせたことで、彼らのこころみは十分に意味があったと言えるでしょう。
 このパフォーマンスを行ったのが、自らを“アートソルジャー”と称するアーティスト集団「Chim↑Pom」。
これまでも、渋谷センター街で繁殖するドブネズミを捕獲して、ピカチュウそっくりのはく製にしてしまったり、国会議事堂前の上空に多数のカラスをおびき寄せたりと、アグレッシブな活動を行って物議を醸してきました。
そんな彼らがキュレーターとなっている企画展『ひっくりかえる ―Turning around― 展』が、現在ワタリウム美術館で開催されています。

 参加しているのは、フランス、ロシア、カナダでそれぞれ社会と向き合った作品を発表し続けているアーティストたち。
たとえばロシアのVOINAは、神父や警官の服装で万引きしたり、博物館で公開セックス(!)をするなどのアナーキーな活動で当局にマークされている過激な集団。
また、弾圧や貧困、差別のもとで暮らす人々のポートレートを、現地の人たちと街の壁に貼るプロジェクトを展開しているフランスのJRなど、彼らの社会派パフォーマンスは、私たちの良識や価値観を「ひっくりかえす」ようなものばかりなのです。

 もちろんChim↑Pom自身も、原発の敷地内で日の丸を放射能のマークに描き換えて掲げる「リアルタイムス」や、福島の瓦礫の山の中で被災地の若者と円陣を組む「気合い百連発」といった映像作品を発表し、思わずハッとするような問題意識を私たちに突き付けてくれます。
 現実をよりリアルに、ショッキングに表現し、たくさんの問題を提起してくれる彼らの活動。
「よかったね」「おもしろかったね」だけでは決して終わらないこの展覧会は、あなたと彼にいつも以上の深いコミュニケーションをもたらしてくれるはず。
たまにはディープに気持ちをぶつけあってみるのもいいのではないでしょうか。

名称:ひっくりかえる ―Turning around― 展
会期:2012年4月1日(日)~7月8日(日)
参加作家:Chim↑Pom、JR、VOINA、Adbusters、ほか
会場:ワタリウム美術館(東京都渋谷区神宮前3-7-6)
休館日:月曜日 ※4月30日は開館
開館時間:11:00~19:00 ※水曜日は21:00まで
入館料:大人1,000円 学生(25歳以下)800円
ペア券1,600円(学生1,200円)
※会期中何度でも入場できるパスポート制チケット
問合せ:03-3402-3001
URL:https://www.watarium.co.jp

Text/Fukusuke Fukuda