8年間思い続けた先輩の境宗介との不倫に走るメンヘラ女子・高月かのんを描く漫画『あげくの果てのカノン』。その作者、米代恭さんが、思考を重ねてこれまでになかった「恋愛」を描こうとする姿は一般読者に恋愛の果てしなさを垣間見させてくれます。
米代さんのその試みの軌跡に迫るインタビューを全3回でお届けします。
■第1回 <恋愛を描けない悩みに新作で向き合う>
■第2回 <あとから崩れる幸せな時間を描くのは好き>
超完璧な少女にひざまずく青年が、気が狂うほど好き
――前回の話ですと、かのんが先輩にときめいているシーンは萌え狂う「オタク」そのものだということでしたが、米代さんは何のオタクなんですか?
米代:めちゃくちゃオタクなのは認めますが、詳細はここでは内緒に……。この業界に入ってしまって、自分が神とあがめている作家さんに遭遇してしまわないかが不安で仕方ないです。
――知り合いになりたいのではなくて?
米代:神様に私の存在を知られたくないですよ。私はひっそりと自分の欲望を向けていたい。しかも、萌え狂っているときの姿ってすごくきもちわるいですから。かのんも、先輩に萌え狂っているときの自分はきもちわるいってことは自覚しています。
だから描きやすくはあるけど、すごく恥ずかしいと思っています。でも、かっこつけてる場合じゃないので頑張っています。『僕は犬』もかなり性癖を全開にしてしまったので、とても恥ずかしかったんですけど……。
――どういう性癖なんですか?
米代:超完璧な少女にひざまずく青年が、気が狂うほど好きなんです。しかもその少女には別に好きな人間がいて、青年はずっと報われない片思いで代用品にされている、みたいな関係性ですね。そういう二次創作ばかりずっと描いていて。
でも、作者にはもちろん知られたくないですし、ふだんは周囲にもそういった話はしないです。知り合って3年くらいしてからやっとポツポツ話すという……。
――米代さんらしいエピソードですね。現実で片思いする相手にも自分の存在は知られたくないんでしょうか?
米代:現実の場合は1対1の関係を構築したいという気持ちはありますし、アプローチもしますね。でも、その人のことだけを考えて6時間経っていたりするので、きもちわるいのは変わらないかな……。
――具体的には何を考えているんですか?
米代:その人と対峙したときの私の動作や、その人の反応、そして振られる瞬間とかをえんえん反復してますね。
――成就するイメージはないんでしょうか?
米代:本当に想像がつかないんですよ。振られることしか考えられなくて。こういう告白をしてこう振られるっていうワンセットを恋愛感情として考えちゃうんですよ。まして、相手に彼女がいるときにアプローチするなんてことは考えたこともないですね。