「誰がダメって言ったの?」紛れもなく10代だったvol.1 /さえりさん

紛れもなく10代だった Alena Getman

 夕方5時、校舎入り口近くの階段の上から3番目にりかは腰掛けていた。

 そこは、昼休みに先輩が座っていたところから、ひとつ隣にずれた場所で、あの人と二人でここに座れたらどんなにいいだろうと、腰掛けているのだった。

 先輩を初めて見たのは、1年生の夏。
登校中、キーホルダーをカチャカチャと鳴らしながら前を歩く男の先輩を、なんともなしに見つめていたことがあった。
すると、その人が不意に振り返ったのだった。
たったそれだけ。恋に落ちるのに理由はなかった。

「りか、お待たせ」
「あ、うん。ぜんぜんへいき」

 立ち上がり、先ほどまでの回想をすべて脳内の箱にしまう。
続きはまた明日考えようと、りかはひとり心に誓う。

「みて。ゲットした」と、ゆうこが一枚の写真を取り出したのは、いつもの交差点に差し掛かった時だった。

 横目でその写真を目にした途端、りかのローファーは、パタンと音を立てて止まった。

 赤いTシャツを着た少し鋭い目つきの白川先輩が、そこには写り込んでいた。
りかは無言でその写真を受け取り、食い入るように見つめる。

制服じゃない。
制服じゃない。
制服じゃない!!!!

 りかが見たことのない、白川先輩。
写真は、よく観察するうちにどうやら修学旅行の一コマだということがわかった。