うまく生きられるっていい
ひっきりなしに女を変えていく友人が居る。
モテはしないのに、女は途切れない。つまり、狙った獲物は逃さない。しかしだ、とてもじゃないけどそう見えない。ヒョロっとした人の良さそうなメガネ君だ。
最近久しぶりに会った学生時代の友人も、ロールキャベツに育っていた。
学生時代には見た目も肉食だったのに、しっかり外見がキャベツになっていた! そして彼は、まさに理想的な女性と最近結婚をした。
「絶対譲れない条件をあげて、選びきった」と豪語した彼は、週に何人もデートし続け、自分なりの結婚相手への条件を当てはめ選び、奥さんを落とすためにたくさんの嘘をついたという。
「結婚相手は俺のこと○○だと勘違いしてる。てか、させてる」とお酒飲みながら豪語する彼。お酒が進み、私という友人の前ではキャベツを被るのを忘れ完全に肉食が見え隠れする彼。こいつら、マジですごい。
ロールキャベツになる人には共通項がある気がする。
それは、「具体的なコンプレックスを持っている」ということだ。
実は頭良さそうに見せかけててあんまり良くないとか、実は結構ブサイクなのに気づかれていなかったり、将来120%ハゲそうだったり、分かりやすい局所的コンプレックスを持っている。コンプレックスというものは、無いと頑張れないし、あり過ぎても自分に自信がなさ過ぎて恋愛を強気になんて出来ない。だから、人間を奮起させるのにちょうどいいのだろう。
早くに自分のコンプレックスに気付けたロールキャベツ君たちは、だから自分への見切りも早かったんだと思う。
自分がシュートを打てる人間ではないことに早々に気付いて、シュートを打てない人間として最大限生きる道を模索した結果なんだろう。だから聞くと、思春期にはあまりイケていないことが多い。
そこから奮起し、努力を身に着け、プライドも捨てて、己を繕うことに成功したんだ。
実は涙ぐましい、ロールキャベツ君。
だから、ロールキャベツになりたかった。もっとうまく、立ち回りたかった。
最近、大人になって暫く経って、ロールキャベツのすごさに驚きます。
あまり好きではないし、ロールキャベツが居るからこんなに世の中嘘くさいんじゃないのとか思うこともあるけれど。その温度の低さに嫌気がさしたりもするけれど。
そう、どうもなんか温度が低いんだよね、ロールキャベツたち。どこか冷めちゃってるんだよね。打算で生きちゃってるから。一緒に居てもあんま面白くはないのよね。
でも、分かってる。
それもまたロールキャベツには必要な要素で、温度が高くカッカしちゃうような人はキャベツはかぶれない。
恋愛にのめり込んで感情でしか接せられない人間は、一回一回の恋愛から教訓なんて得られない。ロールキャベツは、一回一回をちゃんとサンプルとして蓄積させていくのに。
そんなことを、思っていた。
計算高さの骨頂のロールキャベツ君。
でも、うまく生きられるって、いいよねなんて。
男として魅力を感じるかというとまた別の話だけど、ちょっと尊敬するなとも思うのだ。
本当に思う。人間って、それぞれですね。本当に人間って、それぞれですね。
ロールキャベツに今からなれるかな。キャベツのかぶりかたは分からないけど。
一回一回の恋愛に、運命感じて周りが見えなくなって泣き喚くけど。
ダメだこりゃ。来世に期待しよ。
Text/舘そらみ
うまく生きられる男子っていい!
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