前の恋人とは行けなかった海外旅行へ
そんな最中、彼に旅行に行かないかとの誘いを受けました。そもそもわたしは旅好きで、学生時代はバックパックを背負って、ふた月の間、ヨーロッパを回っていたことだってあります。その“別れてくれない恋人”――Yと付き合う前は、友人や、その折々の恋人と行ったり、ひとり旅だって、よくしていました。
Yと付き合い始めてから、もちろん旅行にも誘ったのですが、Yの中では旅行の優先順位が低く……海外旅行に費やす金なんてないということで、かろうじて国内旅行は何度かしたことがあったものの、海外に一緒に行く機会は一度もありませんでした。
もちろん、わたしはそれについて不満を持っていました。けれどもいつしか、自分には叶わないものと諦めてもいたのです。
Yと別れようと決めたすぐ後に降って湧いた、好きな男性との海外旅行の計画。もしも、彼とわたしが旅行に行くことを知った場合、Yがどうなるかは、薄々わかってはいたものの、わたしの中には“恋”というモンスターが巣食ってもいました。だから、迷わずに選んだのは「行く」という選択肢です。
そして、チケットを取り、ガイドブックを買い、トランクに荷物を詰めた出発前夜のこと。わたしのパソコンに、一通のメールが届きました。差出人はY。Yがパソコンのアドレスにメールを送ってくるなんて、初めてのことです。その時点で嫌な予感しかなかったのですが、しかし、わたしは勇気を出してメールを開きました。そしてそこに書かれた文面を見て、すぐに後悔しました。