エロワードはOKでもセクハラ発言はNG
官能作家という職業柄、意識せずとも普段の会話がシモに寄ってしまうことは、非常に多い。人によっては躊躇するであろう『セックス』だとか『オナニー』だとか『クンニ』だとか『フェラチオ』といった言葉を口にすることにまったく抵抗はないし、『マンコ・チンコ・ウンコ』といったワードは『ビール・枝豆・鶏のから揚げ』となんら変わりはない……のですが、それでも、男性のセクハラ発言には辟易することがあります。
つい先日のこと、たまたま、とある年上の男性と飲む機会がありました。2人っきりでのデートや、何かの期待を秘めた合コンではなく、ざっくばらんな飲み会での席だったのですが、その男性は隣に座ったわたしにこう言ったのです。
「お前の乳首、何色なの?」と。
「なんでそんなことを答えなくちゃいけないんですか」というのが最も正しい答えでしょう。
飲みの席であろうと、女を「お前」呼ばわりした上に、「乳首の色を告白しろ」と平然に言って許されるような世の中は是正しなくてはなりません。けれど、つまらない答えでもあります。
そもそも、相手は本当にわたしの乳首の色が知りたいわけではなく「もーっ、そんなこと聞かないでくださいよっ」というような男心をトキメかせる反応を求めている。そこまでわかってなお「なんでそんなことを答えなくちゃいけないんですか」と目くじらを立てるのもまた、エロな物書きとして、ユーモアのない話です。けれど、「ベージュですかねぇ」と適当に受け流すほどには、セクハラ野郎に優しくはなれません。
なんと答えればいいのか……東京大学物語よろしくここまでで0.01秒。
で、挙句わたしが選んだのは、手癖になっていると言ってもいい『率直・ストレートに説明をする』という手段です。
「実はわたし、左の乳首にピアスを開けていた過去がありまして。それまでは小さめのピンクだったんですが、ピアスを開けたことでなんでか肥大したんですよ!しかも、一度外して穴を埋めた上に、さらにもう一度開けた、という経緯でさらに大きくなったんですが、人体の不思議で、左乳首にバランスを取るように、なぜか右乳首も大きくなりまして、なんでわたしの乳首の特徴としては、大きめってことなんです。乳輪は普通だけど乳首は大きめ、巨峰くらいと思っていただいて構わないんですが、ただし色で言うとまぁマスカットまでは薄くはないですが、巨峰までは濃くはありません」と早口でまくしたてたところ、一気に漂ったのはしらけた雰囲気……。
そりゃそうですよね。幼稚なセクハラ男が求めているのは、「もーっ」と怒りながらも最終的には許して貰うこと。思いもよらぬパスを打ち返されても困ってしまうというわけです。
しかし相手も大したもんで、「そうか、お前の乳首は黒いのか」と、なんと、わたしの発言を全スルーして独断し、それ以降、ことあるごとに「乳首が黒いんだもんな」とチャチャを入れてくる始末。乳首が黒いと言われようがピンクだと言われようが、正直、別にどうでもいいんですが、この男性の「乳首が黒い」という言葉に蔑みが見え隠れする以上、言わせっぱなしにしているのも腹が立つ。
セクハラは女とのコミュニケーションツールだというのは、まるっと勘違だってこと、どうしたら男性に解って貰えるんですかね。
…次回は《元彼と再会…!男をもう一度落とす「パーフェクトな元カノの3箇条」とは》をお届けします。
Text/大泉りか