舞台はある高校、
「私が好きな人か」
「私を好きな人か」
二人の男性の間で恋心揺れる高校生・松崎はとりが主人公の物語は時にコミカルに、時にシリアスに、全面的に「高校生の恋愛」を描いています。
本作のゴールは「松崎はとりはどっちの男性と結ばれるか?それともどっちとも結ばれないのか?」です。そのゴールへ向けて紆余曲折があるわけです。人様の恋愛模様は時として「悩んでないでさっさと決めなさいよ」と思うこともありますが、本作はコミカルさとシリアスさのバランスが絶妙です。
高校生のピュアな恋愛は、社会人からすると新鮮で懐かしく感じるでしょう。一方、同世代ではないからこそ、共感できない部分などを見つけて楽しめるはずです。年代を問わず、そして男性も楽しめる映画になっています。
本作は三角関係というより“四角関係”を描いています。
・主人公松崎はとり
・はとりの幼なじみ利太(はとりが好きな人)
・モテまくりのイケメン弘光(はとりを好きな人)
・地味な女子学生安達さん(利太の彼女になった人)
最後に上げた「安達さん」という女の子がとてもキーパーソン。彼女の必死な思いが四角関係をかき乱していきます。その行動はあざとさを見せつつもなぜか共感してしまう説得力がある。「物語を面白くする存在」とも言えるでしょう。
はとりの揺れる乙女心、
利太の葛藤、
弘光の一途さ、
安達さんの必死さ、
それぞれの感情がぶつかり合い、傷つけ合い、そして物語はクライマックスへ。
「はとりが誰を選ぶか」という結末のため、利太と弘光のどちらかを味方したり感情移入したりしていると、思わぬ展開に進んだときに納得がいかなくなります。しかし、それでも本編を通して主人公・松崎はとりの幸せを願うようになっていきます。
そして、本作を通じて自らの恋愛を考えるようにもなります。彼女たちの若くて、ピュアで、駆け引き下手な恋愛模様を見ると、大人だからこそ学ぶものがたくさんあるからです。
コミカルだけどシリアス。それが『ヒロイン失格』の魅力なのです。